「ありがとう」の修学旅行



(12月21日付学級通信より)


【特集:修学旅行!!・・・】

 本当に慌ただしい弾丸修学旅行が終わった。なんだか、「修学旅行」という何かを駆け抜けてきたような気さえする。高校でたった2泊の修学旅行は珍しい。宮水は柄にもなく(笑)、授業の確保ということにうるさいので、授業日を1日でも増やすためか、と思ってしまうが、今年ばかりは当たらない。

 ずいぶん記憶の薄れている人も多いと思うが、修学旅行の計画が動き始めた昨年5月は、震災から日が浅く、避難所から通っている人も少なくなかった。保護者の職場も大きな被害を受け、収入が激減し、回復の見通しも立たない中、どういう修学旅行をするか、ではなく、修学旅行を実施出来るかどうかが最大の問題だった。保護者からは、何とか諸君を修学旅行に行かせていやりたいという強い希望が示され、実施の方向で決まったものの、出来るだけ安く上げるために、1泊短縮のプランが登場したのだった。だから、あっという間だった、忙しすぎた、と文句を言うのではなく、修学旅行に行けたことがありがたかった、幸せだった、と思うのが正しい。

 私には、解団式におけるS先生の最後の言葉がとても印象に残った。「仙台空港に着いても、旅行は終わりではない。家に帰り、親に『ただいま帰りました。ありがとうございました』と挨拶をして終わる」というものだ。その通り、親にも、今の環境にも「ありがとう」だ。

*意外に立派だった諸君の態度*

 たくさんの恥ずかしい思いや、特にホテルの方々に対して申し訳ない思いをするだろうと覚悟して行ったが(覚悟して行ったからかも・・・?)、部屋の使い方、時間を守るということ、バスの中での態度など、予想していたよりもはるかにケジメがつき、立派だった。あまり不愉快な思いをせずに済んだ。当たり前のことであっても、当たり前のことが出来るとは限らないのが人間であり、特に諸君だ(笑)。ぜひ、今後の学校生活でもケジメとメリハリを付けて、お互い不愉快のないように出来るといい。

*修学旅行はひとつのきっかけ*

 1日目はまだしも、3日目の奈良はすさまじかった。せっかく奈良に行ったのに、時間の都合で興福寺にも春日大社にも行かないどころか、東大寺に行っても南大門と大仏殿だけで二月堂に行かず、法隆寺に行っても夢殿に行かないなど、多少知識のある人にとってはもったいなく、悔しい旅行だった。

 しかし、この旅行は「全て」ではない。「きっかけ」である。諸君の中には、事前に「え〜〜っ!お寺なんて・・・!」と文句を言っていながら、旅行中「見てみるとそれなりだな・・・」などと感心している人もいた(心が素直だということ)。今の世の中、個人で関西を旅行するなんて簡単なものである。ぜひ、今回の修学旅行を一つのきっかけとして、次は個人で訪ね、格が全く違う都の寺と庭をじっくり見てみることを勧める。

*台所を覗く楽しさ、そしてUSJ*

 2日目、私はA先生と、東本願寺に少し立ち寄った後、京都の台所・錦町市場を訪ねた。京都には「京野菜」と呼ばれる独特の野菜があり、売られている魚も石巻とは種類がずいぶん違う。見て歩くと実に楽しい。京料理を代表する食材のひとつハモ(宮城では穴子のことをハモと言い、京都で言うハモは食べない)の専門店でハモの串カツを食べ、魚屋から大量の穴子(淡路島産で、宮城の穴子とは全然違う細身のもの。焼いてある)を自宅に送ってご機嫌となった。

 私の大好きな阪急電車(上品なマルーンカラーの車体が、常にピカピカに磨かれ、車内は落ち着いた上品なグリーンのシートと木目調の壁板である。「洗練された」とか「垢抜けした」という形容がぴったりの、本当に都会的できれいな電車だ。それが、新幹線と同じ幅のレールの上を、滑るように快適に走る。)に乗り、今度は庄内の豊南市場を見物した。日本と言わず、世界と言わず、市場は庶民の生活をよく表していて面白い。活気のある雰囲気も楽しい。

 梅田(大阪)に出る。阪急梅田駅は、これまた私の大好きな駅だ。頭端式(行き止まり)の駅で、9本もの線路が並び、しかもその両側にホームがある(列車が着くと、乗客は必ず右側のホームに降りる。列車に乗る人は左側から乗る。実に効率的!)という珍しい形式の駅だ。日本で一番ヨーロッパを感じる場所かも知れない。

 「お仕事」のためにUSJに行った。月曜日だというのに、ごった返していた。世の中には金のある暇人がたくさんいるものだと感心した。思っていたとおりにアメリカ的な場所である。金を媒介にしながらサービス精神にあふれ、食堂のゴミの出し方の豪快さに唖然とした。私は、自分では絶対にこういう所に行かないので、この機会に観察だけはしておこうと思った。だから、A先生に、せっかくだから何かに乗ろうと誘われた時、言われるままにSpace Fantasyという乗り物に乗った。真っ暗な室内をぐるぐると回転しながらジェットコースターのように走る乗り物で、すっかり気分が悪くなってしまった。やっぱり、遊園地は観覧車に限る。

 いくつかの班の諸君と会った。みんなは楽しそうにしていてよかった。

元気で、よいお正月を・・・(安全第一)


(裏面:12月11日付『日本経済新聞』より、「変化の時代に働く(上)〜若者、キャリアを決めつけ 「効率優先」に危うさ潜む」を引用

平居コメント:少し字は小さいけれど、これはとてもいい記事だ。夢はすぐには実現しない。それを持ち続け、一見関係のない事にも熱心に取り組む中で、自分が大きくなり、やがて夢が実現する日がやって来る。目前の利益と、効率のよい生き方を求めることは、決していい結果を生まない。)