読書は暇人のすること?



 昨日、修学旅行について書いた学級通信を引用したが、実は、修学旅行で最も印象に残ったのは、錦町市場でも法隆寺でもない、某生徒との以下のような会話であった。印象的だったのは内容の方だが、そのちぐはぐさもなんだか楽しい。

 帰りの大阪空港での出来事である。私は、本を読みながら飛行機の搭乗が始まるのを待っていた。すぐ近くに、日頃あまり生活態度のよろしくない某君がいた。ふと顔を上げた時、彼と目が合った。

「先生、本読んでて楽しい?」

「楽しいと言えば楽しい。だけど楽しいからと言うより、ちょっと調べたいことがあったから読んでいるだけだ。」

「先生って、もしかして家でも本読むの?」

「えっ?そりゃぁ読むさ・・・」

「ふ〜ん、先生って案外暇なんだね。」

「えっ・・・・・・?」

 もちろん彼は、「先生って非常に忙しいと思っていたので、本を読む時間が取れてよかった」という意味ではなく、「暇をもてあまして、ついに本を読むしかないのか?」という意味で言ったのだと思う。本を読むために、どのようにして時間を確保するかに絶えず苦しんでいる私としては、家で本を読むのが変なことで、本を読む=暇だ、という発想は、まったく思いもよらないものだった。

 では、彼は家で何をしているのだろうか?ゲームをしたり、友達とメールのやりとりをしたり、テレビを見たり、だそうである。もちろん、私の側から見れば、某君こそ「暇なんだね」ということになる。

 日頃、私は彼とそれなりに円満な関係を保ってはいるが、これだけ価値観が食い違っているのだから、一度利害が対立した時には、折り合いを付けるのは大変だろう。しかし、もちろん、世の中には彼のような人(多分、多数派?)から私のような人(多分、少数派?)まで、ずらりといろいろな人が揃っているはずだ。なるほど、円満な社会を作ることが難しいわけだ、と妙に納得したことであった。