二度目は得難い



 もう10日も経つが、オリンピックが終わった。日本人選手がメダルいくつ、などということにはあまり興味がない。一流の技の美しさは堪能させてもらった。それで十分だ。

 ところで、私は試合以外に、テレビに映し出されるギリシア或いはアテネの風景を、いささか懐かしく思いながら注視していた。とある事情もあって、その昔、大学を休学して、中近東〜ヨーロッパを半年ばかり放浪したことがある。その時、イスラエルから船でアテネに入り、ペロポネソス半島パトラスという町から、また船でイタリアに渡り、ひとしきり西ヨーロッパ(←この言葉はもう死語だね)を回った後、トルコのイスタンブールから再びアテネに戻った。ギリシア(主にアテネ)にいたのは1泊2日+2泊3日というごく短い時間で、パルテノン神殿やスーニオン岬くらいは行ったが、あちこち見て歩いたという程ではない。他の国も含めて山のように行きたい所があったので、デルフィにしてもオリンピアにしても離島にしても、行きたいとは思いつつ、また来ればいいや、というごく軽い気持ちで「今後の課題」にしてしまったのである。以来20年、旅行の機会がなかったと言えばウソになるが、他にも行きたい所はたくさんあるし、取れる時間は限られているしで、ギリシア再訪は果たしていない。今後も訪ねるのは難しいような気がする。

 思えば、「そのうちやろう」とか「またチャンスはあるさ」と思いながら、二度とチャンスがない、ということは今まで本当にたくさんあったと思う。特に若い時には、自分もやがては死ぬなどという自覚もなく、無限・永久の未来が広がっているような気がしていたので、なおさら「そのうちまた」とか言いがちなのだが、年を取るにつれて、それを実現させるための制約が年々増えて、結局なかなか実現しないものだ、ということに気付いてくる。オリンピックの放送を見ながら、そんなことを思った。