青蔵鉄路と成績表をつなぐもの



 昨年10月11日、このプリントの裏面に、中国・チベットに通ずる鉄道の建設が順調に進み、2007年7月には開通しそうだとの新聞記事を印刷した。その時私は、自分が10年あまり前にチベットを訪ねた時、建設不能として工事が中断されていたこの路線が、工事再開から僅か4年で完成が見えてきたということと、北京→ラサ約4000キロのうち、最後の1000キロmに私がバスで37時間かかったところ、新しい鉄道は4000キロを48時間で走るということについて、「びっくり仰天とは正にこのこと」とコメントを書いた。

 ところが、先週、なんとこの鉄道が開通したとの記事が、新聞各紙に載った。僅か半年あまり前に、完成が半年後か1年半後か分からないということが果たしてあり得るのか、と今度はすっかり呆れてしまった。

 奇しくも同じ日、長らく閉鎖されていた西インド・シッキムとチベットの間の峠(ナトゥーラという。非常に古く歴史のある国境で、河口慧海の『チベット旅行記』(1902年の話)にも出て来る)が開いたという記事があった。かつて世界の秘境であったチベットがこれほど入りやすくなった所に、時代の急激な変化を感じる。

 ところで、諸君はよく知る通り、「ロマンとは隔たりに対する憧れの感覚である」(平居)。そんな私にとって、こうして、例えばチベットのような場所が非常に入りやすくなってしまうことは、喜ばしい反面、寂しいことでもある。これはチベットだけの話ではなく、旅行に関するだけの話でもない。行けない場所、出来ないことがあってこそ、人は夢を持つこともでき、モチベーションも高めていけるような気がする。

 ・・・と考えながら、ふと諸君の成績表が目に止まった。それは、今最もロマンを感じることの出来るもの・・・かも知れない(笑)。