自然の風景



 先週の水曜日は夏至であった。一年で最も太陽の出ている時間が長い日だというのは言うまでもない。私のような長時間通勤者にとって、朝起きた時も、そして帰宅した時も明るい季節というのはありがたい。特に、何がいいかと言えば、電車に乗っていて外の景色が見えるのがよい。東塩釜陸前浜田、陸前富山〜東名という海の見える所、或いは、野蒜〜陸前小野で鳴瀬川と吉田川を鉄橋で渡る時の風景は、毎日見ていても飽きることがない。

 大昔、学生時代、1ヶ月余りにわたって、ヨーロッパでせっせと美術館とコンサートホール巡りをしたことがある。自分なりに思い入れのある様々な場所を訪ね、物(主に作品)を見、最初のうちは大いに感激していたのだが、1週間も経つと食傷気味となり、3週間も経つと心がまるで反応を示さなくなってしまった。そして、一通りのスケジュールを消化して、列車でイスタンブールに着き、バスと船で見に行ったボスポラス海峡の美しさに対する感激は忘れられない。あの時ほど、人工物に比べて自然を美しいと思ったことはなかった。偉大な芸術作品の中から無限の美を見出すことの出来ない私の問題はあるにせよ、そんな私でさえも決して飽きることのない自然の美というのは偉大である。電車に乗って、毎日松島湾に感心したりしていると、そんなことを思い出す。