検証・仙石東北ライン(2)



 地下鉄仙台駅は、仙石線あおば通(あおばどおり)駅と至近距離で、ホームの端と端が、短い階段で繋がっている。2分もあれば乗り換えが可能である。JR仙台駅からだと10分はみておかないと不安だ。震災前の仙石線だと、普通列車でも快速列車でも、あおば通駅始発なので、地下鉄との接続はスムーズだったが、仙石東北ラインは仙台駅始発なのでそうもいかない。土曜日、私は帰宅を急ぐ必要があったので、仙石東北ラインを利用するのがベターであった。あおば通発着の往復割引切符を買っていたので、地下鉄を降りると、あおば通から仙台まで仙石線に乗り(1分)、そこで仙石東北ラインに乗り換えたのだが、仙台駅の仙石線ホームというのは、離れた地下にあって、これはこれで乗り換えが面倒くさい。よほどのタイミングで電車がなければ、このひと区間だけ仙石線を利用するメリットはないかもしれない。

 日曜日は、10分歩いて乗り換え、途中5回も止まる(5駅ある)地下鉄で行くよりも、そのまま東北本線に乗り換えて次の長町で降り(仙台と長町の間に駅はない)、地下鉄ひと区間分を歩いた方がいいのではないかと思い、そのようにした。ところが、これをすると、歩く距離がずいぶん長くなるのはいいとしても、時間的にどちらが早いかは悩ましいところだ。また、往復割引切符が使えないので、片道970円もする定価の切符を買わなければならなくなる。もっとも、地下鉄は片道250円するので、970円×2=1940円の方が、1540円(往復割引)+250円×2=2040円よりも往復で100円は安く、往復割引切符を買って、仙台〜長町を買い足すと、片道960円となって10円安いが、手間を考えるとバカバカしい。強い雨でも降っていれば、やっぱり地下鉄ということになるだろう。

 今週末には地下鉄東西線が開通する。そうなると、仙石東北ラインが地下鉄との関係で抱えるデメリットは、さらに大きく感じられるようになるだろう。

 また、私にとっては切実な問題ではないが、仙石線の松島海岸〜仙台と高城町以北を日常的に利用する人にとっては、本塩釜多賀城に止まる快速列車がなくなり、普通列車しか利用できなくなったというのはつらいだろう。東北本線の駅は、駅間距離が長いし、めぼしい学校がない。仙台三高(最寄りは東仙台)くらいだろうか。一方、仙石東北ラインから取り残された仙石線沿線には、仙台育英学園中野栄宮城野原)や東北学院小鶴新田)、宮城野高校(福田町)、多賀城高校(下馬=ただし、これは震災前から快速通過駅)といった大きな高校があるのである。

 昨日、石巻と仙台を結ぶ交通手段について、そのメリットとデメリットを整理・比較したわけであるが、実は、震災後の仙石線復旧の方針が発表された当時、東北本線乗り入れを実現させることで、快速列車の所要時間が10分あまり短縮されて50分になる、とJR東日本は言っていたのである。地下鉄の接続に不便が生じることは、誰も言っていなかったし、私も気付いていなかった。それでも、それらのデメリットを上回るメリットがあるのであれば、仕方がないとも言える。メリットはもちろん時間短縮であるが、それは実現したのであろうか?それこそが肝心の点だ。

 我が家にある「時刻表」を当てずっぽうに何冊か抜き出して、この30年間くらいの、仙石線快速の所要時間(仙台発)を調べてみた。次の通りであった。


【現行】・・・上下各14本。停車駅の数によって、緑、赤、特別快速の三種類に分かれている。2000年以前はあおば通駅がないので、仙台〜石巻で比較する。

 緑=60〜64分(6本)  赤=55〜62分(7本)  特快=52分(1本)

【2011年3月】・・・上下各13本。快速らしい快速(Bとする)と多賀城〜矢本だけが快速のもの(Aとする)に分かれる。

 A=69〜75分(7本)  B=64〜68分(6本)

【1997年3月】・・・上下各13本。「うみかぜ」という名前が付いていた。平日と土休日でダイヤが違う(以下は土休ダイヤ)。仙台〜陸前原ノ町が地下化される前で、0.6キロ長く、その区間はスピードを出せない急カーブが多かった。少し停車駅の多い快速(A)、普通の快速(B)、途中1回も停まらない特別快速(C)の三種類。

 A=67〜70分(2本)  B=56分(10本)  C=46分(1本)

【1992年3月】・・・上下各13本。平日と土休日のダイヤが違う。ABCの区分は、上と同じ。所要時間が短いのは、主に矢本〜石巻ノンストップだったからだが、この当時は、石巻から矢本を折り返し運転する区間電車が1日に11本あった。ただし、それらは仙台からの快速に接続していない。

 A=59〜65分(3本)  B=50分(9本)  C=44分(1本)

【1982年5月】・・・上下各6本。所要時間は71〜73分。

 

 これくらいでいいだろう。東北本線乗り入れで高速化を図ったというのは、あまり正しくない。確かに、震災の時と比べれば、10分近く早くなった、特快の52分は立派だ、ということになるのだが、1990年代と同レベル、あるいはそれ以下である。1990年代の「時刻表」を見ていると、快速列車の利便性は、本数、時間ともに飛躍的に向上していて、「なんだ、やれば出来るじゃん!」と言いたくなる。2000年3月に、仙台〜陸前原ノ町の地下化、直線化、0.6キロの短縮が、今回だって、陸前大塚〜陸前小野の内陸部移設でさらに1.3キロの短縮が実現したわけだから、一般的な快速が、矢本〜石巻を各停で走ったとしても、東北本線を経由せずに50分台の前半で走っておかしくない。これらのことを知ってしまうと、今の60分前後の所要時間は、少なくともデメリットを上回るメリットにはとても見えない。(続く)