仙石東北ラインの罠

 明日から、いよいよ塩釜高校への通勤が始まる。そこで、今日は駅に定期券を買いに行った。実は定期券について、10日ほど前に、私はとても困ったことに気が付いた。今日はそのお話。
 私が勤務する予定の塩釜高校東キャンパスは、東北本線塩釜駅からでも、仙石線西塩釜駅からでも、距離がほとんど変わらない。震災前までなら、石巻駅から塩釜駅に行くには、石巻線で小牛田まで行き、東北本線に乗り換えるという作業が必要で、距離的にも時間的にも何のメリットもないので、塩釜駅の利用を考える余地はなかった。ところが、震災復旧に伴い、仙石線東北本線を松島で接続するという工事が行われ、2015年5月30日から、石巻を出た快速列車は松島から東北本線に乗り入れて塩釜駅に止まり、普通列車は従来通り仙石線を通るという形になったのである(仙石東北ライン)。東北本線の方が駅数が少なく、線路も直線的で、仙台までの運行時間が短縮となり、利便性が向上するという説明(宣伝)があったと記憶する(このことの欺瞞はかつて書いた→こちら=3回連載)。私は、6:36石巻発、7:21塩釜着の快速で通勤することになる。帰りは、なんとかして定時退勤に努め、17:23塩釜発に乗れば、18:10石巻着で、家事も家族との夕食も可能だ。購入した定期券は「石巻⇔塩釜」である。
 しかし、実際にはこの通り行くとは限らない。例えば、土曜日に部活で山に行く場合、7時半に学校集合では遅い。6:36は快速の始発なので、これより早く学校に着こうと思えば、5:25から動いている仙石線で行って西塩釜駅を利用しなければならない。快速の終電は、塩釜発が20:35だ。飲みに行ったらもう使えない。その場合は、23:18(西塩釜発)まで動いている仙石線を使うことになる。また、快速は1時間に1本、石巻⇔仙台の普通列車も1時間に1本で、このことは仙石東北ラインの開通前と変わらない。だとすれば、塩釜と西塩釜のどちらかしか使えないということは、仙石線の列車の本数が半分になったのに等しいことを意味する。
 石巻から塩釜までと西塩釜までは、営業距離が33.8㎞でぴったり同じだ。だとすればなおのこと、定期券はどちらの駅でも利用できてくれないと困る。ところが、これがダメらしいのだ。数日前、わざわざ石巻駅の窓口に確認に行ったが、予想通り、塩釜か西塩釜かどちらか限定の定期券しか発行できないと言う。仙石東北ライン開通による利便性の低下は著しい。
 近距離乗車券が「○駅から△円区間」と書かれているのに対して、定期券は「○駅⇔△駅」だ。このこと自体は、決して不合理ではない。定期券は毎回乗車券を買う手間を省くとともに、同じ区間を毎日乗る客に対する割引サービスをするものだからである。仙石線西塩釜まで行っても、石巻線で小牛田まで行っても、片道乗車券の値段は同じだが、塩釜に通勤している人が、休日にちょっと友人宅を訪ねると言って小牛田まで行くのは、イレギュラーな個人旅行であり、JRが便宜を図る必要がない。だから、△円区間ならどこに行ってもいいという定期券は、定期券本来の趣旨から逸脱する。発行する必要がない。
 だが、私の場合はそうではない。どちらの駅を利用しても、向かう先(=利用の目的)は同じである。仙石東北ラインは、あくまでも仙石線の快速列車が変化したもの(バイパス)である。距離も同じだ。とすれば、定期券は両方の駅で使えるのが当然なのである。何かの時には、西塩釜から仙石東北ラインと仙石線の接続駅である高城町まで240円の切符を買えば、高城町石巻の間は定期券が使える。さほど多くない利用回数、たかだか240円と思うかも知れないが、これは本来払う必要のないお金である。そうなると10円でも高い。
 とあれこれ考えて、私はとりあえず窓口でグチをこぼした上、JR東日本に直接文句を言うことにした。ホームページには「ご意見・ご要望」の窓口が設定されている。3月25日、私は上に書いたようなことを穏健な表現で、ごく簡略に整理して送った(文面を控えるの忘れていた)。回答はまだない。回答があれば、続報を書くことにしよう。