成長を続ける人



 5月4日の夜、いわゆる「ぎっくり腰」というやつをやってしまい、歩くこともままならない情けない状態で、ゴールデンウィーク後半の、そのまた後半を棒に振ってしまった。

 その「ぎっくり腰」の直前、5月4日の日中、山形県米沢市に住む87才の某ご老人を訪ねた。一寸した縁があってお知り合いとなり、是非一度お会いしたいと思っていたのである。田舎に住む老人とは言っても、なかなかただの老人ではない。日展入選8回、山形県内の某町が町立の記念館まで作ったという高名な画家である。

 この方は農家に生まれ、高等小学校卒業後、一度就職したものの、その後苦学して東京で絵を学び、招集されて軍隊で5年間を過ごした。除隊となって郷里に戻ると、絵筆を折って仕事に専念。生活のためであると同時に、中途半端なことをすると絵がダメになるとの思いもあっての断筆だったという。その間、自分で開いた店が繁盛し、経済的に安定すると、再び絵筆を取り、以来今日まで40年間、絵を描き続けている。

 私がこんなことをあれこれ書いたのは、私は、彼が本当に自分の好きなこと、やりたいことを見出した人の典型だと思うからだ。そんな人は、家庭環境にも学歴にも関係なく、生涯にわたって成長を続け、命ある限りより高いレベルに到達してゆく。私はそういう一人の人間の姿に感銘を受けるのである。