HISの歴史に思う



(裏面:11月23日朝日新聞「自由な旅応援したい HIS」大平要筆引用)

 一私企業についての記事をあえて載せたのは、私は、この会社の成長・変化の歴史が、現代日本の海外旅行文化史そのものだと思うからだ。

 私が1983年1月に、当時「秀インターナショナル」と称していたこの会社で、初めてインド行きの航空券を買った時、店は朝市にある雑居ビルの2階の一室で、職員は多分二人だった(「多分」というのは、二人いたように思うが、そのうち一人の姿を見ることはまれだったから)。私が1時間居ても他の客は来ず、用もないのにお茶飲みに行ったり、私にある程度の旅行実績が出来てからは、「○○へ行きたい人いるんだけど、情報ないから話聞かせてあげてよ」などと電話がかかってきては、出かけて行って、またグダグダというのどかな所だった。それが、その後、→定禅寺通り→青葉通りと場所を移すに従って膨張し、今や仙台市内だけで四店、従業員も100人を超えようか(未詳)という会社になった。もちろん、暇な時にお茶を飲みに行くというような雰囲気は全くなく、ただの旅行代理店以外の何ものでもない。最近、時間が取れないこともあって縁がなくなってしまったが、上の記事を読んで、若者の間でもパックツアーが主流になったと知り、さもありなんと思うと同時に、多少の寂しさも感じてしまった。旅には大きな冒険心と決意が必要だった。だからロマンもあるし、成長の場にもなり得た。所詮、手軽なものにはそれだけの価値しかない。常に「文化の質は掛けた手間暇に比例する」(平居)のである。