「研究の面白さ」と「話す難しさ」



(10月11日付学級通信より)

(冒頭のエッセイは、10月9日ブログ記事を圧縮したもの)


【これこそ水産高校の醍醐味!】

 先週火曜日の放課後、会議室で、「全国水産・海洋系高等学校生徒研究発表東北地区大会」で発表を行う予定の諸君による校内発表会が行われた。内容等は次の通りであった。

*増殖研究部「新たな生態系の創生を信じて」

(震災後の万石浦で、どのように生態系が回復しているかについての調査結果報告)

*食品科学類型3年「アイデアで活路を season2 〜水高ブランドで石巻を元気に〜」

(魚介類の加工方法に加え、アピール方法も工夫して水高ブランドを全国に発信しようという取り組みの報告)

*調理研究部「食から防災を考えてみた 〜最悪から最善を目指して〜」

(災害でライフラインが途絶した時、身近な物でどのように調理できるのか、という実験記録)

 なにしろ各団体の持ち時間がわずか13分だったので、あまり詳しい説明ではなかったが、パワーポイントを使ったビジュアルな発表だったこともあり、興味を持って聴くことが出来た。

 このようなイベントに出ると、やっぱり水産高校って面白い所だな、と思う。普通科に比べると、「研究」がとても身近なのだ。基本的に通常の授業では、既に知られている、つまり「答え」のあることだけを扱う。しかし、「研究」は違う。たとえ些細なことであったとしても、そこにあるのは世界で初めての「知」であり、それは私たちの心をワクワクさせてくれる。そんなことを再確認することの出来た1時間だった。


【知らない相手に話す難しさ】

 楽しみにしていた仙台Nikon、東北学院大学工学部への施設見学も終わり、今週月曜日には、前回予告してあった「東京の高校生との交流会」というのがあった。E2からは5名の諸君が参加してくれたが、30分も遅刻してきたというお粗末もあって、「交流会」ではなく、求められるままに「被災体験を語る」だけの会になってしまったのは少し残念だった。

 それはともかくとして、5人が語った被災体験の中で、スピーチとしてよくできていたのは、意外にも(?)ヒジュンの話であった。彼の話には、自分の家が海との関係でどのような場所にあったとか、自分が歩道橋の上に逃げていた時、下にはどれくらいの高さ(深さ)の波が来ていたとか、相手がイメージするために必要な具体的状況が適切に盛り込まれていたのである。

 例えば就職試験で、「あなたが学ぶ宮水ってどんな学校ですか?」と質問されることがある。試験官が、宮水がどんな学校か知りたいわけがない。知りたいのは、その生徒が、自分はよく知っていて相手が知らないことについて、うまく情報を取捨選択し、相手がイメージできるように語る力を持っているかどうか、言い換えれば、相手の立場に立ってものを考えることが出来るか、ということである。もちろんこれは、作文でも同じことだ。

 今回せっかくの休日をつぶし、牡鹿で行われたAKB48の被災地支援無料ライブをあきらめて参加してくれた諸君は、そんなことを学ぶことが出来た。面倒な場所にこそ、学ぶ材料は転がっている。


(裏面:10月9日付『朝日新聞』34・35面「挫折こそ万能の父(ノーベル賞受賞の山中伸哉氏について)」

平居コメント:人生は努力、実力、そして運。ただし、実力には点数化できないものも多いし、人柄や生きる姿勢もその一部だと思わされる。それにしても、山中氏はなんと私と同い年!片や京都大学教授でノーベル賞、片や宮水E2動物園の園長先生。この違いには愕然としてしまう。)