「景気の回復が実感できない」について



 参議院選挙まであとわずかである。何党がいいとか、誰がいいというような話をする気はない。少し気になることだけ書いておこう。

 自民党が、「アベノミクス」だの「3本の矢」だので、この数ヶ月間の円安・株高傾向を、景気回復を示す指標として自慢すれば、野党は、「景気回復が庶民には実感できない」「収入の増加に結び付いていない」と批判する。こういうのを「どっちもどっち」と言うのであろう。

 安倍政権が誕生してから実質的に約半年。たったこれだけの時間で、景気が回復して、国民の所得が増加し、生活に豊かさが戻ってきた、などということになったら、それこそ恐ろしいと思う。自民党が成果を強調するから、野党は批判したくもなるのだろうが、どちらも短期的利益の偏重、思考の射程の短さを暴露し合っているようなものである。

 参議院選挙が目前に迫っているから、国民の心に訴える主張を考えた結果としてそうなるのは分かる。国民がいかに目前の利益に振り回される存在であるか、いかに理念よりも具体的な利益を求めるかということが、政党の主張に反映され、与党であれ野党であれ、当選した人は次のハードルへ向けて、短期的利益の追求と、政治的パフォーマンスを競うようになるのであろう。悪いのは政治家ではない。政治家は国民を映す鏡である。

 私は「本質(理念)は長く、現実は短い」「小さな利益は目前に、より大きな不利益が将来に」とよく言う。わずか半年で、景気が回復し、その恩恵を国民が実感できるような施策を国民が求めるとすれば、それは取り返しがつかない程の大きな不利益を将来に生み出すに違いない。