島サミットとNPT



 先週の金・土と、「島サミット」なる国際会議が福島県いわき市で開かれていた。参加していたのは、太平洋の島国14ヶ国と、オーストラリア、ニュージーランドである。かの安倍首相は、参加各国に対して、今後3年間で550億円以上の支援を約束したらしい。

 そのお金で、防災や気候変動分野での援助を行うということだが、私が全く理解できないのは、その見返りとして、国連安保理改革への協力、石油や天然ガス、鉱物などの資源の供給を求めるという方針である。いや、理解できないのは、その「方針」ではない。そういうことをしゃあしゃあと言うことができる神経である。

 バヌアツやツバルといった太平洋の島国が、なぜ海面上昇や低気圧の異常発達に怯えなければならないかというと、地球の温暖化が進んでいるからで、地球の温暖化が進んでいるのは、主に先進諸国が「豊かさ」を求めて無節操に化石燃料を燃やしてきた(いる)からである。もはや、この点について疑いの余地はない。だから、安保理はともかくとしても、石油や天然ガスの供給を求めつつ、温暖化対策の支援を行うというのは、自分で問題を発生させておいて、その処理をほんの一部だけ引き受けて恩を売るという、およそまともな感覚では恥ずかしくて、言うことも実行することも出来ないようなことを主張していることになる。

 おそらく、安倍首相自身は、その異常さに気が付いていない。だから、恥ずかしげもなくそんな取り引きができるのだ。だが、島国の人々は気が付いているだろう。そして、「ふざけるな!」とはらわたの煮えくりかえる思いでいるに違いない。だが、それを顔に出してしまっては、温暖化が改善されない上に、その対策や、出てしまった被害の救済にも支障が出るから、表面上は有り難がっているふりをしているだけであろう。少なくとも私だったら、それらの国々の代表の目を見つめることはできない。

 困ったと言えば、同じ時期にアメリカで開かれていたNPTも、島サミットに劣るものではなかった。こちらで情けないのは、日本ではなくアメリカである。中東の非核地帯構想に反対したのである。イスラエル核兵器を持つことに、NOと言えなかったわけだ。

 オバマ大統領は、言うまでもなく、2009年のノーベル平和賞受賞者である。主に非核化への決意を述べた演説を、ノルウェーノーベル賞委員会が高く評価しての授賞であった。いったいあれは何だったの?もちろん、当時も今も、そんなことが容易に実現するとは、私だって思ってはいないが、それにしても、その後のアメリカはお粗末すぎる。行動面において、一歩たりとも前進が感じられない。そして、今回のNPTであった。

 以前私は、オバマ氏のパレスチナ政策を批判したことがある(→こちら)。しかし、その時でも、オバマ氏がやっていたことは、イスラエルのガザ攻撃に対して沈黙していたというだけである。今回は、そのイスラエル核兵器を持つことについて、積極的な容認の姿勢を示したのである。

 昨年の夏に、「ロシアの声」というロシア国営放送のサイトで、ノーベル委員会のヤグランド委員長が、オバマ大統領はノーベル賞を直ちに返上すべきだと語った、というニュースが流れた。他のメディアは報道しなかった(と思う)ので、そのような事実が本当にあったかどうかは怪しい。ヤグランド委員長は、オバマ氏にそんなメッセージを送るよりも、彼が行動する前に賞を与えてしまった自分たちを反省した方がいいのではないか、とも思う。しかし、仮に事実でなかったとしても、間違いなく「気持ち」は事実であり、世界の多くの人々の共感を得る「気持ち」であるだろう。

 非核化や軍縮が進まないだけではない。世界中の多くの人々に失望を与えた罪は大きい。