まずは講師について・・・ラボ第21回

 昨夜はラボ・トーク・セッション第21回であった。講師は海洋研究開発機構(JAMSTEC)の特任技術副主任・大木健氏(33歳)。演題は、「未知のフィールドをロボットで探る」。
 今回のラボは、幾つかの点でこれまでのラボとは違っていた。まず、ラボというのは謝礼をごくわずか(正に「薄謝」)しか出していない(出せない)ということもあり、基本的に「交通費の実費でも出してくれれば、タダでもいいよ」という人に、主催者である坂田教授か私のコネで来てもらっている。ところが、今回は直接面識のない人物を、正規の手続きで招いた。正規の手続きというのは、JAMSTECに派遣依頼の文書を出し、出張扱いで来ていただいたということである(ただし、「薄謝」であることは変わらず)。
 今年の4月、ラボ第17回で、ヤマハ発動機の進藤祐太氏に「Team KUROSHIO」の話をしてもらったことは既に書いた(→こちら)。その時、話を聞いて熱くなった数名の高校教員から、この話はぜひ高校生に聞かせたいという声が出た、ということ、進藤氏に打診したところ、KUROSHIOには「自分など足下にも及ばない、『ペテン師』と呼ばれるほど話術巧みなメンバーもいる」と言われた話も書いた。そして実は、今回来石の大木氏こそがその「ペテン師」なのである(ちなみに、ここで言う「ペテン師」とは、嘘を語って人をだますという意味ではなく、魅力的な話で人の心を自在に動かすという意味である)。
 つまり、本当は高校生向け公開講座のために大木氏を招きたいという気持ちがあり、そのためだけに来てもらうのはもったいないので、ラボにもご登場いただくのはもちろん、大学生にも聞かせようということになり、大木氏に了解してもらった。2泊3日、大学と高校生向けは同じKUROSHIOの話でいいが、ラボ参加者の多く(?)は既にその話を、話者は違うとは言え聞いているので、ラボでは違う話(大木氏の専門の核心となる部分)をして欲しい、それでいて「薄謝」というのは、なかなか厚かましいお願いである。進藤氏の紹介があったということと、大木氏が大学院を仙台で出ているため、「宮城県にはご恩があるから」と言って下さったこととにより、この重厚企画は実現の運びとなった。遠く浜松から、紹介者の進藤祐太氏も手弁当で駆けつけてくれた。
 私は、自分の仕事の都合で大学での講演には行けなかったのだが、13日夜に石巻市内の寿司屋で開いたささやかなる歓迎の宴から始まり、2回の講演、2晩続きで深夜まで酒。昨日午前は我が家でお茶。今日は大木氏と2人でサン・フアン館と女川に行った。とても刺激に満ちた楽しい3日間だった。
 進藤氏から、「すごい人だ」とさんざん聞かされていた上、千葉大学に高校2年から「飛び入学」し、26歳で博士という履歴を見れば(個人情報の流出ごめんなさい)、我々凡人とは似ても似つかぬ秀才中の秀才。そこから妄想は膨らんで、私は「怖い人」もしくは「難しい人」というイメージを持つに至っていたのだが、初めて会った大木氏は実に爽やかな好青年だった。よく考えてみると、進藤氏と同じ弱冠33歳だし、「ペテン師」と呼ばれる人物である。お高くとまっていたり、威圧感や気むずかしさがあったりしては、本当の意味で人の心を動かすことなどできるわけがない。
 講演を聞いていても、酒を飲みながら話をしていても、それが快感なのは、話に頭のいい人特有の分かりやすさがある、ということ。情報の取捨選択にしても、話の組み立てにしても、とにかく適切・明解なのである。加えて、専門以外の分野についても知識豊かだ。特に歴史については、ご本人が「オタク」だと言っていたが、歴史以外でも自由自在という感じがした。
 あれれ、こんなことを書いていたら、高校生のための公開講座やラボに触れられなくなってしまった。そちらの話は明日にしよう。(続く)