被災した小学校の将来像



 今日は、震災で一躍有名になった(?)門脇小学校(門小)の今後に関する保護者説明会が行われた。正式名称は、「石巻市立学校施設災害復旧整備計画策定に係る門脇地区保護者懇談会」という恐ろしく長いものである。

 門小が居候している門脇中学校(門中)の体育館に、220の座席を用意し、教育長以下15名の市職員が来たが、参加した保護者は約50人という、少々寂しい会だった。みんな関心がないのか?事情があって来れないのか?後者の場合、事情とは震災に関わるものなのかそうでないのか・・・???

 意見を聞くというよりは、市が考えているプランを二つ提示して、質問に答えるという形式を取ったため、参加者が二つのプランのうちどちらをベターと考えたのか、或いは、それ以外の方法を良しとするのか、よく見えなかった。

 市が提示した二つの案とは、(1)門小を石巻小学校(石小)に統合する(実質廃校=こういう言葉は使わなかったけど・・・)、(2)門中内に併設して存続する(現状に近い)、である。学区の3分の2くらいが津波で壊滅し、そのほとんどは今後住宅地とせず、「シンボル公園」になることが概ね決まっているわけだから、確かに門小の必要性は高くない。我が家では、相当前から石小に統合すればいい、と言っていた。

 仮に(1)案が通って、従来の門小生が石小を卒業すると、門中ではなく、石中に通うことになる。すると、門中は大街道小学校(ここも学区の半分ほどが津波で壊滅)の卒業生だけが進学する小さな中学校になってしまう。

 石巻以外の人は知らないだろうから、少し説明しておくと。実は、門中と石中は石中学区の中に隣り合わせに建っている。つまり、門小と大街道小の卒業生は、学区外にある門中に通うのである。この隣り合わせの中学校というのは、なんとも不自然で無駄な感じがする。だから、私は、門小を石小に統合すると共に、門中と石中も統合すれば、石巻中心部の学校・学区はずいぶんすっきりするのに、と思っている。それでマンモス化がひどいかと言えば、決してそんなことはない。1学年200人くらいのものである。学区の分かりにくさが解消する上、経済的なメリットも大きい。私にはデメリットが思い浮かばない。

 ところが、保護者からの質問を聞いていると、門小に並々ならぬ執着を持っている人が少なくないことを感じた。これが私には理解できない感覚である。、私はよく、人々の「住み慣れた場所への愛着(執着)」の強さを報道で見聞きして当惑を覚える。さすがに、その場所に60年、70年と住んできたお年寄りの言い分なら理解できなくもない。しかし、相手は小学生である。乱暴な言い方だが、ごちゃごちゃと一緒にすれば、最初は文句を言っても、すぐに慣れて楽しく遊ぶようになるだろうと思う。なまじ執着する大人が、門小を実質廃校にして、子供を石小に行かせるのは可哀想だ、などと言いだすと、その気持ちが子供の新しい環境への適応に悪影響を与え、起こるはずのない問題が起こるのだ、と私は思っている。ちなみに我が娘は、放課後になると毎日、石小の校庭に建つ児童館の「学童保育」に通っていて、石小にも友達がたくさんいるので、一緒になれるといいなぁ、と言っている。それでけっこう。

 ところで、門小の今後に関する質疑が一段落すると、現在学区から遠いところにある仮設住宅から子供を通わせるための苦労(バスの事情等)に関する意見質問がたくさん出た。

 仮設に住み、一体いつどこに恒久的な生活再建が出来るのか見えない状況では、子供に転校を繰り返させるにも忍びないので、その地域の小学校に転校させるわけにも行かず、なかなかいろいろな苦労があるものだと思った。震災直後の、「とりあえず住む場所を」「とりあえず食べる物・着る物を」という状況下では、問題が分かりやすいのでサポートもしやすく、ボランティアも有効に機能したが、震災後半年頃から直面する問題というのは、なかなか部外者には手を出せず、かかるお金も多額で、様々な人の思惑が重層的に絡み合って一致点の見出せない重い問題が多いと感じる。震災の後始末は、最近ようやく始まったのだと思う。