大学に「普通学部」はない



 秋は忙しい。昨日は文化祭。そして今日は、学習塾協会主催の進学相談会で、古川に行っていた。天気がよかったことが災いしてか、会場に来た中学生は、わずかに65名だったが、そのうち25名がじっくりと宮水の話を聞いてくれて、私としても新鮮な気分になれた楽しい2時間半だった。石巻辺りだと、良くも悪くも、宮水に対するイメージというか先入観があって、「今更、宮水の話なんて・・・」という雰囲気が見え隠れするものだが、古川辺りだと、生徒も素直に、未知の学校に対する好奇心を示しながら聞いてくれるのがいい。

 私はかつて、今日のような場所で、中学生にどのような話をするか、ということについて記事を書いたことがある(→こちらこちら、教員向けに話した時の記事はこちら)。基本的にはそう大きく変わっていない。だが、少しでも宮水を受験する生徒を増やしたいというよりは、いろいろな世界があることを知って欲しい、宮水についての話を聞くことで、日本人の食生活について考え、将来的に水産業サポーターになって欲しい、という意識がますます強くなっているような気がする。私と中学生が話をしている隣で、宮水の校長あたりが私たちの会話を聞いていれば、「それ本当に学校説明なの?」「お前、いったい何しに古川まで行ってんだよ・・・?!」と文句を言われかねない。


「何学科に行きたいの?普通科?机に向かって国数英勉強してて楽しい?それが楽しい人は普通科いいよ。だけど、普通科行った人って、ほとんど大学に進学するよね。高校に入る時には普通科選べるけど、大学に入る時に普通学部って選べないからね。それまでにできるだけいろんな分野の話を聞いておくといいよ。普通科だ、って思ったら普通科の話しか興味がない、耳に入らない、こんな人が最悪。大きな人間になれないし、壁にぶち当たった時にめげるばっかりで乗り越えられない。あなたたちは普通科に行きたいって言いながら、宮水の話聞きに来たでしょ。大物になれるよ!大学を選ぶ時に、今日の話思い出す人出てくるんじゃないかな?」

「この宮水パンフレットに、「水産・海洋・食品は、無限の可能性を秘めた夢の産業分野です!」って書いてある。だいたいどこの高校のパンフレットでも、いいことしか書かないわけだから、これだって宣伝文句みたいなもんだよね。だけど、私たちの本心とは関係ないか、と言えば、そうじゃない。人間が生き物である以上は、食べずにいることは絶対にできない。今、世の中では流行り廃れがすごく激しいけど、食べることが廃れていくことって絶対ないよね。まして、日本は食糧自給率も低いし、土地も広くない。それでいて、海の面積は世界で第6位だ。石油だって無限にあるわけじゃない。いや、近い将来必ずなくなってくる。だけど、外国との交流や貿易をゼロにはできない。その時、ダメになるのは飛行機で、生き残るのは船だろう。だから、水産・海洋・食品といった分野が将来的にますます大事になってくるのは間違いないと思う。」

水産業って、陸上競技のイメージなんだよね。100メートル走と砲丸投げ走り高跳びを見て、同じ種目だと思う人なんかいない。だけど、陸上競技としてくくられるでしょ?水産業ってどんなイメージ?って中学生に聞くと、船とか魚とか答えるけど、本当の意味で船に乗るのは航海技術・機関工学っていう二つのクラスだけだ。魚を触るのが嫌だっていう人もいるけど、逆に、機関工学のクラスでは魚に触る機会がない。それから、船を運転する資格を海技資格って言って、6級から1級まであるんだけど、基本的には運転できる船の大きさが違うだけで、漁船用とかタンカー用とか客船用というふうには分かれていない。だから、水産高校で海技資格を取っても、貨物船や客船で働くことができる。つまりね、「水産」って、水産高校のクラスを目安として言うと、船を運転する(航海技術)、エンジンの管理をする(機関工学)、海洋環境と魚の性質について勉強し水産資源の量を増やす(生物環境)、魚を衛生管理しながら加工し販売する(フードビジネス)、魚を調理してお客さんに提供する(調理)、という5つの分野がお互いに支え合って成り立っている総合産業なんだよね。しかも、貨物船などによる物流や、人の輸送も守備範囲だから、水産高校で勉強するのは「水産業」というよりは「海洋業」って言った方が正しいかも知れないな。」


 さて、今週末(土曜日)は、宮水のオープンキャンパスである。今年のオープンキャンパスは、以前予告したとおり、「キャンパスツアー」である。宮水の特殊な実習施設の全てを、わずか2時間で怒濤のように巡る。先週の水曜日に、担当教員の事前研修(予習)会を行ったところ、やはり宮水の全施設を見たことのある人はおらず、「へーっ!」とか「すげーっ!」とか言いながら、質問が多数飛び交う盛り上がった会となった。天気も良さそうだし、むしろ宮水を受験する気のない多くの中学生と大人に来て欲しいものだ。(申し込み締め切りは一応29日→詳しくは宮水ホームページへ)