二つの学校紹介行事から



オープンキャンパス

 昨日はオープンキャンパスであった。このブログでも案内していたとおり、今年は「宮水キャンパスツアー」。前日まで、絶対に雨は降らないと信じ、雨対策を怠ったところ、不幸にして雨。急遽、職員の車で生徒を運び、保護者にも頼って、何とか予定通りのコースを回ることができた。まぁ、そんな落ち度はあったものの、参加した人たちは、大人も含めてずいぶん楽しかったようだ。終了後に書いてもらったアンケートは、81名が出してくれて、その全てで、「とても楽しかった」か「まあまあ楽しかった」に○が付いていた。実質的な未提出者は、おそらくいない。

 少し舞台裏を書くと、実は、今週末11月8日〜9日に、名取市で「全国産業教育フェア」という専門高校が全国から集結する大イベントがある。10月25日が文化祭、11月1日がオープンキャンパス、8〜9日が全国産フェアという3週連続週末出勤のスケジュールは厳しい。加えて部活動の新人大会や校外での学校紹介イベントなども重なって入っている。全国産フェアがある今年に限って、オープンキャンパスの日程を大きく動かすか、中止にできないか、という意見が、昨年度末に多く出された。その後の議論は長くなるので省略するが、結論として、オープンキャンパスは例年通りの日程でやる、そして、これは普通科の教員が担当し、産フェアは実科(専門)が担当する、また、8日は生徒全員が産フェア会場に行き、その引率は普通科も担当する。つまり、11月の第1週と第2週の土日計4日で、普通科も実科も出勤日を2日間として、負担のバランスをとる、ということになったのである。その結果、オープンキャンパスで、昨年までのような専門科目の体験授業というやり方ができなくなったため、いわば苦し紛れで考え出されたのがキャンパスツアー、というわけである。

 普通科教員の事前研修会を行った話は、10月26日に書いたとおりである(→こちら)。担当教員はみんな真剣だった。その後、復習と確認のために、自らコースを回っている人を何人か見たし、某先生は、当日、出発間際まで、私が作った各実習施設の解説書を開会式会場の外で必死に読み直していた。のぞき込むと、びっしりと赤線が引かれ、書き込みがしてあった。

 それらを見ながら、私は、今回のオープンキャンパスは、中学生ではなく、宮水教員にとって、非常に価値ある行事になったな、と思った。どんな組織でも、自分が担当しないことについては無関心、という傾向はあるだろう。その結果、全体の中での自分の仕事の位置というものが見えず、仕事の質を高めることができなくなる。今回のオープンキャンパスは、宮水の普通科教員が、自分たちが勤務してる学校の全貌を知るための本当にいい機会だったのだ。


《適材適所》

 今日は、先週に引き続き学習塾協会主催の進学相談会(仙台)であった。惰性で生きているような高校生よりも、目の輝いた中学生を相手にするのは楽しい。仕事で日曜日がつぶれても苦にならない。仕事が疲労を生むのは、勤務時間の長さの問題ではないということをひしひしと感じる。

 11時から始まったイベントも3時間半ほど過ぎ、来場者がずいぶん少なくなってきた頃、ある塾の先生が私の所に来た。先生の塾に通う生徒で、何人か宮水を勧めたい生徒がいるのだが、仙台からの通学は可能だろうか、という質問から話は始まった。やがて、先生は次のようなことを言われた。

「私は、もっと自分のやりたいこととの関係で高校を選べばいいと思うんですよ。例えば、偏差値60の生徒だって、本当に海や船が好きで、将来航海士や機関士になりたいと思うのであれば、二高に行かず、水産を選ぶということがあってもいい。成績だけで高校を決めるというのがいいとは、私には思えません。そんなものではありませんか?」

 これに対して私は、次のように答えた。

「偏差値60で二高に入れる生徒に、宮水を選ばせるのは間違いだと思います。そういう子は、文字の読み書きが得意なわけだし、本当に航海士や機関士になりたければ、高校卒業の時点で、北大なり東京海洋大なり神戸大なり水産大学校なりを選ばせても決して遅くありません。人間、特に若者はいつ考え方が変わるか分からないし、そういう子にはいろいろな可能性を探させればいいと思います。水産高校というのは、海や船や魚の専門家を育てるとは言っても、手足を使っての実習が多く、実用的ではあるけれども専門性がさほど高くない資格を取って、高卒で社会の即戦力になる人材を育てるというのが主な役割なんですよ。そこはやはり適性をどう考えるか、ということの範囲じゃないでしょうか?適性というのは、興味関心だけではありません。」

 宮水に異動してから、意外にも、私は学習塾の先生と話をする機会が増え、学習塾(←私は生徒としても通った経験がない)というものに対する偏見も消え、むしろその先生方を尊敬するようになっている(→参考)。この先生だって、塾から宮水生よりは二高生を出した方が、経営上有利なはずなのに、生徒の将来を考えればこそ、上のような発言が出てくるわけだ。 確かに、水産高校を出て、4級か5級の海技資格を取って船に乗っても、仕事をしながら更に上級の資格を取ることもできるし、水産高校から東京海洋大学水産大学校に進む生徒も少数ながらいる。だが、それらは「例外」の範囲内であり、誰でもがそうなる(なれる)わけではない。

 また、世の中にはいろいろな人が必要で、1級海技士ばかりでも困るし、6級海技士ばかりでも困る。それぞれの能力と好み、その他の事情に応じて、自分が活躍するフィールドは選べばいい。だが、能力の高い人ほど、選択の範囲は広いわけだから、それをある時点で必要以上に狭める必要はない。私はそんなことを正直に語ったわけだ。

 先生は納得してくれたようだった。私には、お互いに本音でものを言い合った、という爽快感が残った。