今度の学校

 塩釜高校に勤務するようになって3週間が過ぎた。しょせん普通科の高校なので、水産高校の時のように1年がかりでレポートするようなこともないが、宮城県内最大の公立高校ということで、それによる特殊性は多少あるので、どのような学校かということを少し報告しておこう。
 上で「普通科の高校」と書いたが、あまり正確な言い方ではない。各学年、普通科が8クラス、ビジネス科(商業科)が2クラス、合計10学級の学校である。当然、学校全体ではその3倍になるので、30学級1200人が定員である。仙台市の中心から電車で15分+徒歩10分という地の利のため、定員割れなどということはあろうはずもなく、入試競争率は1.5倍、いや2倍にもなるらしい。辞める生徒もほとんどいない。したがって、定員通りの生徒が在籍している。
 思えば、私の母校、兵庫県立龍野高等学校は、やはり1学年10学級ながら、当時は1学級の生徒数が45だったので、全校生徒は1350人にもなった。それと比べれば、1200人がどれほどのものか、とも思うが、全校生徒が集まった状態というのをまだ見ていないので、なんとも言えない。聞くところによれば「壮観」らしい。
 本当の全校集会を見たことがないというのは、新任式・始業式の時には、まだ1年生が入学していなかったからであるが、必ずしもそれだけではない。キャンパスが二つあって、対面式・部活動紹介といった定番行事も、東西二つのキャンパスで別々に開かれたからである。
 塩釜高校は伝統校との印象があるが、今年度の1年生は「第8回生」だという。戦前から存在した塩釜高校と塩釜女子高が合併して、新しい塩釜高校になったのが8年前なのだ。8年前には、学区が廃止され全県が1学区になると同時に、古くからある別学校が全て共学化されるという全県的な大改革(←本当は大改悪と言いたいところだ)があった。新・塩釜高校もその時に生まれたわけだが、郡部の学校が男子校と女子校を統合して、学級数を半減させたりした一方で、都市圏にある塩釜では学級を減らせなかった。それならいっそ、塩釜高校と塩釜女子高を、2校のままそれぞれ共学化すればよかったものを(石巻などはこのパターン。石巻高校と石巻女子高がそれぞれ共学化して、女子高は好文館高校と改名)、そうはしなかった。おそらく、あまりにもキャンパスが近すぎたからだろう。
 統合して10学級の高校にはなったものの、片方のキャンパスだけでは生徒が入りきらないので、旧塩釜女子高のキャンパスを東キャンパスとして、普通科の1・2年生が使用し、旧塩釜高校のキャンパスを西キャンパスとして、普通科3年生とビジネス科1〜3年生が使っている。私は2学年担当なので、東勤務だ。
 少し前までは、両方のキャンパスで授業を持っている教員がけっこういたらしい。両キャンパスの間は歩いても5分あまり、自転車や車なら3分といったところなのだが、さすがに授業を終えてから移動し、10分後に始まる授業に間に合わせるのは厳しい。移動する時には授業の前後を1時間空ける、となると、時間割の編成が難しい。というわけで、あの手この手で東西かけ持ちを減らした結果、今では、両方で授業を持つ教員は、75人の教員(講師含む)のうち7人しかいない。
 とはいえ、部活動を始めとして、片方のキャンパスだけではすまないことも多く、生徒も教員も行ったり来たりしながら生活している。私は自転車だが、教員の多くは車で動いているようだ。これが難物。塩釜高校は山の上に建っていて、狭い曲がりくねった一方通行道路が多い。東から西に行くのは簡単だが、西から東は一度山を下り、ぐるりと回って東側から東キャンパスに戻るという面倒が強いられる。よほど強い雨でも降っていればともかく、そこまでして車で移動、という感覚が私には分からない。
 山の上に建っているおかげで、見晴らしはすこぶるよい。が、意外なことに、海(松島湾)はほとんど見えない。かろうじて、校舎の東端から少し海面がのぞける程度だ。西を見れば、船形連峰から蔵王連峰にかけて、奥羽山脈のパノラマはなかなかのものだ。多賀城から仙台港にかけてもよく見える。北側は谷を隔てて塩釜神社の森。先週までは桜も咲いていたが、今週はすっかり散ってしまった。(続く)