公立高校後期選抜の出願が、昨日締め切られ、今日の朝刊に出願数の一覧が掲載されていた。我が宮水は、１０７名の募集に対し、出願は６６名で、競争率０．６２倍。生徒募集の最前線にいる私は、これで更迭だな（笑）。
それはともかく、多少思う所があったので、あくまでも新聞発表で分かる範囲のことから、一般市民としての所感を書いておこうと思う。
『河北新報』では、「後期選抜 全日制１．２２倍」というのが、見出しと言ってよいかどうかは分からないが、最も大きな字で書かれていた。しかし、全県の募集定員の半分以上を占める仙台圏の競争率が、北部１．４８倍、南部１．４２倍と高率であるために、そのような倍率になるだけで、郡部は少子化の影響＋全県一学区化に伴う仙台圏への流出の影響で、お寒いものである。栗原などは全校全学科定員割れだ。参考までに、大きな枠で見ておこう。
南部地区（白石・角田） ０．９７倍
北部地区（大崎・栗原など）０．８９倍
東部地区（石巻・本吉） ０．９７倍
新聞記事のサブタイトルのようなところには、「宮城工電子機械科２．３３倍 専門学科依然人気」とある。確かに、競争率が２倍を超えた６校６学科で、普通科は松島高校だけだ（２．０倍）。だからこそ、宮水の０．６２倍が余計に際立つ。
この中で、私の地元である石巻に絞ってみると、平均倍率は１．０４倍なのだが、私が特に気になったのは、普通高校の倍率である。
石巻高校 １．０２倍（昨年度０．９倍）
石巻好文館高校 １．１６倍（同 １．１１倍）
石巻西高校 １．２４倍（同 １．０９倍）
あえて昨年度の倍率を書いたのは、昨年も今年も傾向が似ているからである。新聞には載っていなかったが、一昨年も同様だったような気がする。
石巻高校と好文館高校は旧制中学校・女学校上がりの伝統校で、西高はできてから３０年という、比較的新しい高校だ。一般に最も「名門校」と言われるのは石巻高校、次が好文館、そして西というのが序列であろう。この場合、通常は「名門校」ほど、多くの入学希望者が集まるように思う。ところが、そうはなっておらず、むしろ石巻高校は避けられている印象すらある。
今日、ある所で人と話をしていて、今時の生徒は一生懸命勉強するのが嫌で、普通科の、ほどほどな、楽しく３年間を過ごせそうな学校に入ろうとするのではないか？と言われてショックを受けた。確かに、そのようにも思われるからである。トップである石巻高校に入れば、有名大学に進学すべく、相当なプレッシャーを各所からかけられるだろう。２番手以下は気が楽だ。
宮水だけでなく、最近の高校生を見ていると、どうしてもこの大学に行きたい、と言って頑張るのではなく、行ける大学に行く、という傾向がある。努力は入学後にする、不毛な受験勉強にエネルギーは費やさない、という思想によるのではなく、「楽」を優先させる結果と見える。なにしろ、大学進学率は５０％を超え、大学は乱立し、どこでも学生集めに汲汲としているわけだから、努力なんかしなくても、入れる大学はたくさんある。いわゆる有名大学や医学部に対する執着さえなければ、「受験勉強」など必要ない。一昔前なら、たとえ入れる大学があったとしても、「いい大学」に行って「いい会社」に入りたい、或いは見栄（虚栄心）によってでも「いい大学」に入りたいと、しのぎを削るということがあっただろう。その必要がなければ、確かに高校はどこでもいいわけだ。
硬直した「偏差値信仰」は問題だ。偏差値の序列が学校の価値ではない。だが、学校の勉強なんてどうでもいい、というのも間違いだ。しかも、それ以外の価値に対する強固な意志があってのことならともかく、入る前も入った後も面倒くさいことはしたくない、とりあえず毎日を安穏と暮らしたい、という若者が増えているとしたら、これは深刻な問題である。そんなことになるくらいなら、見栄や虚栄心のためであったとしても、がつがつと勉強していた方がまだいい。学ぶことによってこそ世界は広がり、真理や正義に目覚めることもあるだろうし、論理的で深い思考も可能になって、感覚的・衝動的な世界から逃れられるからである。
社会は、よりよくしようという意欲と、それに支えられた努力によってこそ、維持され向上する。単に経済的な豊かさだけなら、維持も向上もなくてよいかもしれないが、平和となるとそうもいかない。目先の安逸に溺れた生活の果てに、落とし穴はぽっかりと大きな口を開けて待っている。
石巻地区以外を見てみると、その地域の「名門校」は、ある程度の受験生を集めている。だから、上のような石巻地区に関する分析は、今の日本や宮城県の中学生の実態を象徴しているのではなく、石巻地区に限った例外的な「真実」かも知れないし、単なる「憶測」に過ぎないかも知れない。いや、そうであって欲しいと思う。おそらく、石巻高校は何かをサボった結果として、好文館高校や西高は何らかの努力の結果として、中学生と保護者から倍率に表れたような評価を受けたのだろう。そう思うことにする。真偽は･･･確かめる方法ないかな？
