機械と電気の斜陽化?

 宮城県の公立高校入試・後期選抜の出願が締め切られ、今朝の朝刊に県内各校の出願者数が載っていた。他県の人には信じがたいほどの仙台一極集中は、昨年より更に悪化した感じがする。ちなみに、私は一昨年、宮城県の公立高校の地域ごとの競争率についての話を書いたのであるが(→こちら)、その時、かろうじて1倍を超えていた刈田柴田地区と登米地区も、今年は1倍を割り、1倍を超えているのはついに仙台圏だけとなった。私が仙台圏と言うのは、仙台駅から電車に乗る時間が概ね30分以内の場所である。
 仙台圏に当たる中部南地区の平均競争率は1.39倍、中部北地区は1.36倍。一方、仙台圏から外れる南部地区(白石・角田など)は0.85倍、北部地区(大崎・栗原など)も0.85倍、東部地区(石巻気仙沼など)は0.94倍であった。8年前に県が学区を廃止したことが二極化に拍車をかけたと思われるが、不思議なことに、地方から学区の復活という要望が語られるのをあまり耳にしない。この二極化はまずいぞ、と声を上げるよりは、私(またはうちの子)も仙台の学校に行かなくちゃ、という意識が働くと同時に、自分が仙台の高校に入学できないという事態を想定することが出来ないのだろう。こうして格差は生まれ、拡大する。
 ひときわ目を引いたのは、志津川高校普通科の、募集39名に対して、出願者1名、0.03倍という衝撃的な数字だ。これは、この1名が合格したとして、1人で高校生活を送る、ということは意味しない。前期選抜で既に41人を取っているからである。他の高校もほとんどが定員割れなので、2次募集への応募もほとんどないだろうから、来春、志津川高校は20人台前半×2クラスでの新学期になるのだろう。過疎化を津波が後押しした典型的な事例である。
 また、高倍率の学校・学科が多い仙台圏にあって、多賀城高校の災害科学科が、募集24名に対して出願10名、0.42倍というのも目を引く数字だ。仙台圏ではダントツの低倍率である。
 これは東日本大震災後、県知事の旗振りによって出来た新しい学科だ。ネタに困っているマスコミが、何かにつけてちやほやと報道するので、目にしたことがある人も多いだろう。私は、災害科学(防災)なんて高校で学科としてやるようなことではないので、止めればいいのに、と思っていた。大きな災害があったとなれば、災害!災害!とばかり叫んでいなければ落ち着かない、パフォーマンス的な安っぽい精神である。少しいい気味だな、とも、受験生の方が賢いな、とも思う。
 高校でも大学でも、どこの学科を出たかというのは、就職の際さほど大きな意味を持たないので、多賀城高校に行きたいが、普通科は少し敷居が高いという生徒が、あえて災害科学科を受けるというのは毎年一定数いるだろう。だが、災害科学を学びたいから多賀城高校へ、という生徒は、減少し続けると私は思う。今後、防災科学科はどのような道をたどるのだろうか?
 仙台市内にある宮城県工業高校(宮水=水産高校と同じで、「宮城県」は県立であることを表す、県立高校全てに付く部分なので、校名はただの「工業高校」である。)は、たいへんな人気校で、競争率が全県で1位などという年もあったと記憶するが、意外にも、6つの学科のうち2つで定員割れを起こしている。機械(0.98倍)とインテリア(0.67倍)だ。インテリア科を持つ学校は他にないので比較できないが、機械科は全県的に不人気に見える。仙台市立工業高校で2.07倍になったのを例外として、1倍を超えたのが古川(1.13倍)だけ。他の工業高校、すなわち白石、黒川、登米産業、石巻気仙沼向洋で定員割れ。仙台圏以外なので、もともと定員割れの学校・学科が多い中でだが、機械科は他の学科と比べてやはり倍率が低い。また、白石の電気科が志津川と同様、24名募集に出願1名で0.04倍。見れば、全県的に電気も低調だ。機械や電気なんて、「物作り日本」の核心を支えてきた分野である。デジタル化が進んで、手作業で作ったり直したりすることの出来る機械が減り、それによって魅力(=人気)を失ってきたのではないか?と想像する。大切な分野だと思うのだが・・・寂しい。他県はどうなっているのだろう?
 一見無味乾燥な数字の羅列って、よくよく見ていると発見があって面白い。