単純を極める奥深さ



(学校で書いた駄文に手を加えたもの)

 今月15日の毎日新聞で、辻谷政久という人の訃報を目にした。記事には、「家族経営の工場で40年以上にわたって陸上競技で使う砲丸を製作。1996年のアトランタオリンピックから3大会連続で、男子砲丸投げの全メダリストが辻谷氏の砲丸を使用した。球の中心にぴったりと重心を合わせる高度な技術で、「世界一の砲丸職人」と称された。」とある。もちろん全然知らない人だったのだが、何とも不思議で感動的な気分になった。

 砲丸の玉なんてただの丸い鉄の塊である。ゆがんでいるとか気泡が入っているとかでない限り、品質に違いがあるとは思えない。構造すこぶる単純なので、、機械に任せてしまった方がいい物が出来るようにも思う。しかし、現実にこんな職人さんがいて、その技術が他人には真似の出来ないものだったとなると、そういうものではないらしい。

 私はここに「仕事」の奥深さを見る。ひどく単純で簡単そうに見えることでも、極めることは難しく、そこには大きな価値があるということだ。 合掌