ダニアレルゲン160倍!

 帰宅すると、埼玉県にある某病院から封書が来ていた。けっこう分厚い。知人・友人が勤めているという記憶も、自分が何かの都合でお世話になったという記憶もないので、何事かといぶかしく思いながら封を切ると、「保護者の皆様へ」というお手紙が入っている。「お子様のアレルゲン調査にご協力いただきましてありがとうございます」云々と続く。ははぁ。そう言えば、しばらく前、9月か10月頃に、小学校からの依頼だったが紹介だったかで、子供の布団にどれくらいダニがいるか、シールで採取して送ったことがあるぞ、と思いだした。
 送り状に「秋のアレルゲン調査結果をお知らせします」とあって、2枚目が「ダニアレルゲン量測定結果報告書」だ。全国調査のものではなく、石巻市内の小学生202名の結果(数値や分布)と、息子の布団の結果や解説が書かれている。
 それによれば、息子の布団のダニアレルゲン量は、6023.2ng/㎡で、判定は「非常に多い」だ。石巻市の平均値は285.8ng/㎡。関東地方在住の成人ぜんそくの患者116名の平均値は36.3ng/㎡であり、石巻市はその7.9倍だったと、わざわざ赤字で書いてある。なんとびっくり!!我が息子の布団は、7.9倍のさらに21倍である。 どこかの「ベンゼン79倍」どころの話ではない(笑)。
 報告書には、「ダニに対するアレルギー体質を獲得するのは20ng/㎡、ダニに対するアレルギー疾患を発症するのは70ng/㎡とも言われています」と解説されている。私には「アレルギー体質を獲得する」という日本語の意味が不明だが、ともかく、息子の布団がめちゃくちゃにダニに汚染されていることだけは間違いがない。隣に書かれている、石巻の調査の結果分布によれば、最も多かった人は万をはるかに超えていて、最少は1未満だ。息子は上から15番目くらい。模擬試験並みに偏差値を付ければ、堂々の70超えで、東大クラスだ(笑)。
 普通の親がどのように反応するのかは知らないが、私は「大変だ!きれいにしなくちゃ」などとは全然考えない。同封されていた「環境整備講習」や「防ダニシート・プレゼント」に申し込もうとも思わない。息子の頭をなでながら、「おお、やるなぁ。やっぱりお前は偉いぞ!こんなに汚染された布団にもぐって寝ていながら、ぴんぴんしている」と、ニコニコ褒めるのである。
 健康が害されていない限り、人間は劣悪な環境の方がいい。いや、劣悪な環境でも、それに耐え得る体を持っていた方がいいのである。何の問題も発生していないし、蓄積が将来的に問題を引き起こすというものでもないのに、なまじ「大変!」などと言って、負けじと息子の布団を掃除し、ダニアレルゲンを1未満などにして、それに慣れてしまった日には、それ以外の環境では生きていけない体になりかねない。旅行に行くことさえままならなくなってしまう。環境を整備すればするほど、人間はひ弱になるのである。
 そう言えば、現代人に特有のいろいろな病気は、清潔すぎる生活環境によって生み出されているとかなんとか言って、回虫だったか、ギョウ虫だったか、サナダムシだったかを飲み込む人体実験をした寄生虫博士がいたとも記憶する。自分でやりたいとは思わないが、その発想は理解出来る。
 封筒の中には、第2回冬の調査への依頼文も入っていた。どうしようかな?冬場、なかなか息子の布団を干せずにいたので、もしかすると数値は更に上昇し、8000、いや10000にもなっているかも知れないな。待てよ。そもそも、私の布団はどうなっているのかな?息子の布団ではなく、私の布団にシールを貼って送ってみようかな?もちろん、それは研究データを乱すだけなのでしないけれど、いたずら心も刺激されて、なんだか妙にわくわくする。