教員免許更新講習

 先月の末に、今年の夏休みは忙しい、その理由のひとつに教員免許更新講習というのがある、ということを書いた。そう、悪名高き例の講習である。
 教員の資質を向上させなければならない、しかし、簡単にそれを実現させる方法なんてあるわけがないし、教員免許がそもそも何を保証するわけでもないのに(→参考記事1参考記事2)、世間に対してアピールする必要のある政治家が頑張り、とりあえずは10年に1度、教員免許の更新が必要となった。更新のためには講習を受けて合格し、申請しなければ、教員免許が失効し、自動的に失職する(退職か分限免職かは?)。いつが更新のタイミングかというのは、免許状を取得してからの年数ではなく、生年月日によって決まっている。
 平成21年度から始まったこの制度も、今年で9年目。民主党政権の時には、あまりにも下らない制度だから廃止しよう、だが、始まってしまった以上は、全員が1回ずつは更新しないと不公平だからとりあえず10年は止められないなど、いろいろな噂が聞こえてきた。政権が自民党に戻ってから、そんな噂も耳にしなくなった。政治家、特に自民党の政治家は教員管理が大好きなのである。管理職というのは、「優れた教員」なので免除となるが、博士号を持っていても、教員としての優秀性は担保されないということで、免除にはならない。
 このブログの読者は、教員でない方のほうが多いはずなので、もう少しだけ、制度の説明を書く。これは該当者である私にとっても非常に分かりにくい。どういう趣旨で、どういう講座を何時間受けなければならないか、ということさえ、実は分かりにくいのである。
 講習には、「必修領域」「選択必修領域」「選択領域」の3種類がある。その意味と最低必要単位数は次の通りである。

必修領域(6単位=1日):国の教育政策や世界の教育動向
選択必修領域(6単位):9つのテーマから、学校種・免許種などに応じて選択
選択領域(18単位):生徒に対する指導上の課題

 つまり、5日間かかる、ということである。ただし、通信制もある。
 「必修」はまだ少し分かるが、「選択必修」と「選択」の違いはよく分からない。また、基本的に専門教科と関係する講座を受講する必要はない。「学校種・免許種などに応じて選択」などと書いてあっても、何の制約にもなっていない。柔軟であるとも、いい加減だとも言える。
 開設する講座については、文科省のホームページから領域別、地方別の一覧表をダウンロードできるようになっているし、各主催者(主に大学だが、研究機関のような所もある)が独自にホームページで公開している。ところが、なにしろ「必修」は356大学等840講座、「選択必修」は384大学等1,796講座、「選択」は529大学等7,577講座もあるのである(この制度に否定的な人は、大学の先生の負担の大きさも問題にする。当然だ)。一つ一つの講座についての情報量が限られているということもあって、面白そうな講座を探すのは至難である。また、1単位あたり1000円(と決まっているのかどうかは?)の受講料と、受講のための経費(交通費等)は全て自己負担である。よほどでなければ近くで済ませよう、ということになる。受講のために仕事を休むことについてだけは、「職専免(職務に専念することの免除)」という特別な休暇が使える。
 受け入れ可能人数の中での対面講習の割合は、「必修」が68.9%、「選択必修」が40.1%、「選択」が55.0%である。つまり、一番高い「必修」でも3割以上、「選択必修」に至っては6割が、通信講座ということである。私も一応通信講座の案内も見てみた。人間と人間が直接関わらない教育を私は信じていない、ということもあるが、濃厚な「商売」のにおいがした。とことん形式的でいいから、出来るだけ手間をかけずに更新資格だけ得たい、というニーズが相当数あるのだろう。もちろん、仕事や居住地による制約から、大学に出向けない人もいるに違いないので、通信講座が設定されていることは悪いことではない。ただ、その割合が高すぎるのではないか?と思う。
 予約の受け付けは、各主催者のホームページで行われるが、私の感覚だと、これがなかなか大変。実際には通信講座よりも対面講習を希望する人が多く、枠が不足しているという事情もあるのかも知れないが、少し油断をすると埋まってしまう。どうしても出たい講座がある場合は、受け付け開始の瞬間に申し込むのが無難だ。失効の2年前から受講できるにもかかわらず、私が昨年、ひとつも単位を取らず、全てが今年になってしまったのは、「明日出来ることを今日しない」という自分の性格の問題もあるが、昨年、希望の講座の予約に失敗したという事情もある。
 私は、8月3日に「必修領域」の講習を石巻専修大学で受け、今日「選択必修領域」の講習を宮城教育大学で受けた。前者は、総文祭の仕事の都合で行けないはずだったので、申し込んでいなかったが、締め切り日を少し過ぎてから総文祭の仕事が2日で終わることになり、あわてて専修大学にお願いしたら入れてもらえた。後者は、それこそ受け付け開始の瞬間に申し込んだ。(続く)