オリンピック(1)・・・メダルの数

 北海道に行っている間にオリンピックが始まった。テレビを見れば、どのチャンネルもオリンピックばかりなので、見たいとか、録画しておきたいとかいうような番組がなく、余計なことを考える必要がないのは気楽だった。
 私は、もし私が何でも自由に決めてよい独裁者だったら、コロナ禍でもオリンピックを開催したような気がする。それは、今まで何度も書いてきたとおり、コロナによる制限をほどほどにしておかなければ、逆にデメリットが大きくなってしまうからである。おそらく、国民に対する説明としては、「感染症対策も大切かも知れないが、人の心を明るくするイベントも必要だ。何でも自粛してしまうことによって、人間の健全な成長や、社会生活を阻害するデメリットも考慮しなければならない」みたいなことを語ったのではないか、と思う。
 しかし、結論は同じく「やる」でも、現政権の説明は全く違っていた。と言うより、説明になっていなかった。「人類がコロナに打ち勝った証に」は笑止千万。もともとが「復興五輪」であったことも考えると、要するに何もないのだな。何もないと言うことは、「金(かね)」だということである。同時に、いざオリンピックが始まってしまえば、国民は熱狂し、面倒なことは忘れて、開催を決めた政権を支持するようになるという、人を小馬鹿にしたような思惑が透けて見えていたので(→参考記事)、努力を重ねてきた選手に敬意を抱き、活躍の場を与えて上げたいとは思いつつ、どうしても不愉快から逃れられなかった。日本人選手が史上最多のメダルを獲得したにもかかわらず、その後の世論調査では支持率が更に下がっていることで、私は少し溜飲を下げた。それでも、3~4人に1人が菅政権を支持しているというのは、驚くべきことなのだけれど・・・。
 さて、今回のオリンピックでは、メダル数が史上最多、日本人選手大健闘と称えられることが多いが、果たしてそれほど立派なことだろうか?次のような整理をしてみよう。

2012年ロンドン大会 種目数302 日本人選手293人 メダル38個(金7)
2016年リオデジャネイロ大会 306  338人  41個(12)
2021年東京大会      339   583人  58個(27)

 見ての通り。種目数、選手数が増えるにしたがって、メダルも増えているというだけの話である。ちなみに選手何人に1人がメダルを取ったかということを計算してみると、ロンドン7.7人、リオ8.2人、東京10人で、どんどん率が低下している。もっとも、東京大会では野球、ソフトボールという選手数が多くてメダルは1個扱いという競技があったので、あまり単純比較は出来ないが、それにしても、「躍進した」とか「飛躍的に増えた」というようなことは絶対にないのである。
 しかも、今回増えた(復活含む)競技というのは、野球、ソフトボール、空手、サーフィン、ローラースポーツ(主にスケートボード)、スポーツクライミングで、これら全ての競技で日本人はメダルを取っている。全てではないかも知れないが、開催国であるという立場を生かして増やした得意技種目で、思惑通りにメダルを取った、というだけのことである。
 また、今回ほど開催国有利であった大会というのはない。海外から来る選手には、感染症対策の厳しい制限が課せられ、異常な高温多湿に体を慣らすのに時間がかかることが分かっていながら、事前合宿が出来なかった選手も多かった。北朝鮮ギニアが選手の派遣を中止した他、自分が陽性になったために参加できなかった有力選手、参加しなかった有力選手も、テニスやゴルフを中心に一定数出た。問題の性質は異なるが、ロシアは前回に続き今回も参加制限がかかって、本来よりも100人ほど少ない選手団となった。
 こういうことを考えるにつけても、メダル、メダルの大騒ぎには鼻白む思いがする。
 また、今回この記事を書くためにあれこれ調べる中で、国別の選手数を調べるというごく基本的なことが非常に難しいことを知った。検索して出てくるのは、国別のメダル獲得数ばかりである。おそらく、「参加することに意義がある」という近代オリンピックの精神も、すっかり忘れられている、もしくはどうでもいいものになっているのだろう。こうしてオリンピックから心が離れていく私は、やはり天の邪鬼なのだろうか?