旭山を越えてホルモン屋

 昨晩は、職場の忘年会だった。と書けば、いかにも大きな宴会だったようだが、お祭り男であるF君の呼びかけに応じたのは、わずか4名であった。会場は、石巻の新市街地・蛇田のホルモン屋。我が家からは5㎞半くらいある。
 どうやって行こうかなぁ、と考えていて、ふと思いついたのは、JR石巻線前谷地駅から県立自然公園・旭山を越えて、蛇田まで走る、という遠回りプランであった。運動にもなるし、ビールも数段美味くなるに違いない。1時間に1本あるかないかのローカル線であるJR石巻線の時刻を調べてみると、ほどよい時間の列車があった。

自宅・・・石巻駅14:32-JR-14:55前谷地駅・・・15:30旭山(三角点)・・・(観音堂に寄り道)・・・16:00桑柄・・・16:27広渕・・・17:10イオンモール石巻

 2万5千分の1地形図「広渕」を見ると、前谷地側の箱清水という集落から登る山道に、わざわざ「東北自然歩道」と書いてあるから、案内板も設置され、迷うこともない立派な道だろうと思っていたら、何の標識もなく、少し分かりにくい。地形図上の小径と実際の道の場所もずれているようだ。民家の庭に入ってしまったり、小さな祠に突き当たったり、多少の右往左往をしたが、それでも30分ほどで頂上に着いた。
 旭山は173.6m。頂上付近は3ヘクタールもの芝生広場になっており、北側の一部を除いて眺望絶佳。海が驚くほど近くに見える。その頂上には朝日山計仙麻(けせま)神社が、中腹には観音堂がある。「旭山」「朝日山」と表記が違う理由も、計仙麻神社という不思議な名前の由来も分からない。観音堂は1938年建築という新しいものである。斜面に懸崖様式で作られているが、背後の山道から回廊に直接出るので、下から見上げることは難しい。徳富蘇峰筆の「観自在」という扁額が掛けられている。ご本尊の観音様は国方林三(くにかたりんぞう 1883~1966年)の手による国宝級のものらしいが、少し冬の夕暮れということもあって、はっきりとは見えなかった。
 南側に下山し、登り口の大鳥居から東に曲がると、かなり早く蛇田に着いてしまいそうだったので、南西方面を経由して、回り込むように広渕を目指す。それでも、早く着きすぎたので、イオンモールの書店で若干時間をつぶし、定刻にホルモン屋に入った。
 ビールを美味しく飲める適度な運動量を少し超えていたのかも知れない。確かに、最初は美味いと思ったが、その後、あまり酒を飲む気にならなくなり、ビール2杯と熱燗を1本飲んだ後は、グレープフルーツジュースばかり飲んでいた。
 8時半に店を出た後は、陸前山下駅の近くに住むS君と、酔いを覚ましながらのんびりと歩いて帰った。往路の自宅から駅までを含めると25㎞くらい「走+歩」したことになる。「いい酒を飲んだ」というよりは「いい運動をした」という気分。今年の飲み会もこれでおしまい。また一歩、年末に近づく。