「せこい」のはどっち?

 先週の日曜日、地元紙である河北新報で、宮城県内17市町の小中学校100校で、教員が学校徴収金で物品を購入した際に、ポイントを得ていた事例が248件あったとして報道された、と思ったら、翌日には県立学校(高校と支援学校)48校でも223件の同様の事例が発覚したと報道された。学校の物品を立て替え払いで買う際、自分のクレジットカードやポイントカードを利用して「不正に」ポイントを得たのだという。「不正に」得たポイントは、小中学校で約10,300円分(1件あたり41円強)、県立学校では16,000円分(同72円)だという。これを「ポイ活」(ポイント活動?・・・初めて聞いた!)と言い、「横領のようなものだ」「せこい」「みみっちい」などの声が保護者から上がっているという。
 はてな?これはそんなに悪いことなのだろうか?
 私の勤務校では、公金による物品購入でポイント類を得てはならん、というお触れが出ているし、私はそもそもそのような機会がないので、誘惑に駆られたことも恩恵に浴したこともないが、記事を読んでいて、これが本当に「不正」で「悪い」ことなのかな?と考え込んでしまった。いや、お触れに反することをやっていれば「不正」であるのは間違いないのだろうが、なんだかあんまり「悪い」気はしない。
 なぜなら、ポイントを得るためにあえて高い店を選んだとか、値引きとポイントの二者択一でポイントを選んだとかいうならともかく、もしもそうでなければ、学校に損害はまったく発生していないからである。某職員がポイントを得ても得なくても、学校が支出する金額が同じなら、わざわざポイントを返上したり、ポイントが付かない方法を選んだりするのはなんだか変だ。
 厳密に言えば、得たポイント分の金額を学校に職員自らが返納するのが最もよいが、それによって増える事務作業量とのバランスで、わざわざそんなことをする必要があるとは思えない。
 「せこい」とか「みみっちい」とか言うが、例えば職員Aさんが、部活動の消耗品を某スポーツ用品店に買いに行くとする。たいていの場合、それをわざわざ出張で、ということにはならず、多少遠くまで買いに行ったとしても、ガソリン代が支給されるということもない。土日に部活で学校に来ても、手当の安さ(1日2400円だったかな?)は論外として、土日の通勤は通勤手当算出の範囲に入っていない。つまり自腹だ。自宅や出張先から、自分の電話で生徒や保護者に電話をすることもある。更には、近年悪名高い「4%定額働かせ放題」を世間はどう考えているのだろう?それらは「せこい」働かせ方ではないのだろうか?
 そんなことを思うにつけても、ちょっとくらいのポイント取得を、新聞第一面のトップ記事で、いかにも「悪い先生たちだ」と叩くのは、それを目的にするかのように公費での買い物に血道を上げる「ポイ活」教員でもない限り、不当だという気がする。「4%定額~」はひどさが桁違いなので例外として、上に書いたような持ち出し事例について、私は目くじらを立てたくない。ただ、今回程度のポイントにマスコミや世間が目くじらを立てるのであれば、じゃぁ、こっちはどうなんだ、と文句を言いたくなる。が、そんなことをすれば、当然、社会はますます窮屈で、ギスギスしたものになってくる。
 あまり細々したところで非難し合わず、ある程度なあなあで融通を利かせあう。それが全体としてバランスの取れた、しかも穏やかで居心地のいい学校(社会)を作っていくことになるはずだ。小さな悪でも、悪は悪として徹底的につぶす、ということが、全体としてのメリットになることは・・・私の実感としては、ないな。