裏金問題と政党交付金

 中学3年の愚息が、テレビのニュースを見ながら、「首相の、質問された時に、たくさん話しながら、実は全然答えていない、あの技ってすげぇな」と言う。さすがは我が息子。「愚」息などと呼んでは失礼、まったくその通りだ。
 明らかにYESかNOかで答えられる質問なのに、それを言わず、なんだかぐだぐだと説明(?)をしては、元々の質問が何だったか忘れさせる。はぐらかすとも、ごまかすとも、煙に巻くとも言える。もちろん、それが目指すところなのだろうが、厚顔無恥。良心というものがあったら出来ない技だなぁ、と感心する。思わず、「頭いいなぁ」と言ったら、愚息が「もうちょっとマシな使い方しろよ」と返してきた。これまたその通り。
 だいたい、パーティー券なんて、もともと賄賂性が高いに決まっている。買ってくれと頼まれた人(会社)は、買えば見返りがある、と言うよりも、買わなければ不利益を被る、という心配をするに違いない。企業献金はダメでも個人献金は可、年額5万円を超えなければ、収支報告書に氏名、住所等を記載する必要はない、今回のキックバックは、帳簿に書かなかったから違法となったのであって、書いてあれば問題がない・・・う~~ん、誰が見たって法律は「ざる」だ。
 マスコミによっても、国会の場でも、いろいろな問題点が指摘されているが、私がとても不思議なのは、「政党交付金」という言葉をほとんど耳にしないことだ。
 政党交付金とは、企業、団体などからの政治献金を制限することの代わりとして、政府が政党に交付することになったお金である。政治は金がかかるものだ、企業献金を禁ずるなら、国が政治活動費を保障しよう、として交付が決定した(1994年)。議員数と国政選挙での得票数によって金額が決められ、2022年に自民党が受け取ったのは約160億円だ。
 私はとても腹立たしく思う。献金を排する代わりに、税金から政党活動費を支給しておきながら、自分達が作ったザル法の隙間を縫う形で、交付金に加えて実質的な企業献金を集めているというのは、国民に対する大変立派な裏切りである。裏金の汚らしさは、政党交付金の存在によってなおいっそう際立つ。政党交付金を没収しろ、くらいの話にならないのはおかしい。
 こちらはマスコミもたびたび問題にすることだが、裏金の使い道はぜひ明らかにしてほしい。やましい使い方をするから帳簿に書けなかったとしか考えられないからだ。
 ついでに、元官房長官の松野某が、裏金事件で退任直前の2週間で、内閣官房報償費(機密費)を4660万円使っていたことが報道された。機密費が13億円あることからすれば、2週間で約5千万円の支出というのはおかしくないが、そもそも、使途を明らかにする必要のない13億円ものお金があること自体が問題だ。政治には、秘密にせざるを得ないことがあるというのは理解するが、せめて野党の国会議員にチェックさせるくらいなことは必要だろう。どう考えても、秘密情報のお礼に毎年13億円が必要だなどありえない。
 もうひとつ、私が気にしているのは、裏金事件にTという女性閣僚が一切登場しないことだ。Tも悪いことをしているに違いない、と疑っているわけではない。私が恐れるのは、安倍派を中心として、多くの議員が黒となり、一時的であるにもせよ、政治的な勢いを失う中で、名前が出なかったTが相対的に立場を強めることである。
 Tは、昨秋、放送法に関する問題で、かなり厚かましいしらを切り(→参考記事)、たびたび靖国神社を参拝する人である(靖国はやはり思想傾向を表すバロメーターです)。裏金派の停滞に乗じて、彼女が存在感を増すのは絶対に危ない。
 とまぁ、こんなことを考えながら、例によって眉間にしわを寄せて報道を見ている私であった。