コントラバス奏者・片倉宏樹



 週末は山岳部OB会の行事で、現役生と諸君と共に北泉が岳に行っていた。二日間快晴という、ほとんどあり得ないコンディションだった。それだけに夜中は多少冷え込んだが、ものすごい星空。あれだけ多くの星が近くにギラギラと輝いていることは、しょっちゅう山に登っていてもそう多くはない。頂上からは、鳥海山朝日岳、新庄神室岳といったはるか遠くの山々までくっきり見えて絶景!下山時、気温はぐんぐん上がり、雪はグシャグシャのシャーベット。スキー場の下まで下りてくると、温度計は10℃を指していた。冬の山のいい所を満喫できた上、春の到来をひしひしと感じた二日間だった。石巻の自宅に帰ると、庭でウグイスが鳴いていた。

〈大学生活の充実と喜び・・・ある卒業生の姿〉

 今年の大学入試も大詰め。今日、東大と一橋の発表があって、国公立大学の前期日程が完結する。

 そんな時期に当たる先週金曜日の夜、私は青年文化センターに行った。昨春、一高を卒業して東京芸術大学に進学したコントラバス演奏者の片倉宏樹君が、仙台フィルハーモニーをバックに独奏者としてデビューしたのである。私はこの演奏会のことを、2階の掲示板にあったポスターで知り、「やるなぁ」と感心したり、「なんだ、俺に断りもなく・・・」と腹立たしく思ったり(←もちろん冗談ですよ)していたところ、それから数日経って、ご招待券なるものがちゃんと本人の手紙入りで届いた。「今時の若者」と侮れない。

 音楽はよく分からなかった。曲が悪いとか演奏が悪いとかいう問題ではない。失敗したらどうしようか、というような余計な心配ばかりが頭をよぎり、ドキドキして、おちおち音楽なんか聴いていられなかったのである(私にしてこうなんだから、両親なんか本当に大変だっただろう)。

 音楽はよく分からなかったが、とてもよく分かったことがひとつある。それは、彼がとんでもなく豊かな、充実した大学生活を送り、その中でこの一年間怠りなく勉強し、よく自分を高めた、ということだ。大学に入ることは、高校生活の目標となるのが関の山で、人生の目標になることなどあり得ない、というのは誰にでも分かる自明なことだが、分かっているから大学入学後も安心してあぐらをかいたりしない、というのは、諸君が「勉強の仕方」を知っていながら実行できないのと同様、口で言うほど簡単ではないような気がする。終演後、楽屋口で会った片倉君の顔には、演奏を終えた安心と満足と、そんな今の自分についての自信が漲っていた。

 今年合格した諸君も、一年後にそんな顔が出来るといい。