成長の喜び



 三連休の中日であった昨日は、例によって一高山岳部付き添いで泉が岳(1172m)に行っていた。天気予報を見ていると、いかにも最悪といったコンディションが予想され、実際、朝起きた時には、石巻でも今冬最高の10cm近い積雪があり、そもそも泉が岳の麓に行き着けるのであろうか、と心配したほどであった。

 ところが、心配はまあ「杞憂」というに近く、雪は降り続いていたものの、時折晴れ間も見え、風もこの時期としてはひどく穏やかで、予定通りのコースをほぼ予想通りのタイムで歩き、無事下山した。

 頂上に立てたのもよかったが、特筆すべきは、ある生徒の行動であった。泉が岳山頂から「三叉路」(水神と北泉が岳の中間点に、泉が岳からの下山路が合流する点を「三叉路」と呼んでいる。世の中には三叉路などいくらでもあるのに、少なくとも宮城県で単に「三叉路」と言う時には、ここを指す。現地には「三叉路」と道標も立っている。何故かは分からない。謎である)に向って下山している時、I君が、どうもおかしい、と言い始めた。コンパスを振ってみると、正しい方角から90度近く南にずれている。「三叉路」に向う途中から南に延びる尾根に入り込んだらしい。原則に従い、自分たちの踏み跡を引き返し、赤いマーキングのある所まで戻って再びコンパスを振り、正しいルートに戻ることが出来た。

 私も長く山岳部の生徒と関わっているが、生徒というのは、出発の瞬間に全然違う方向へ歩き出すことすら珍しくない。まして、山中で自分たちの居場所を地形図上に求めさせても、珍答奇答のオンパレードといった具合である。それが、私が何も言わなくても、自分の居場所に疑問を感じ地形図を見て修正しようとしたのであるから、なんとも嬉しい驚きであった。人間にとって成長は喜びである。それは、どんなレベルのことであっても、何度繰り返されても飽きることのない喜びだ。そんな思いを再確認できた山行であった。実にけっこう。