深い山に浸る・・・南面白山の森と沢



 今日は部活で山登りだった。珍しく、日帰り登山である。5時に家を出て、南面白山に登り、帰宅したのは20時であった。

 天気予報では曇り、午後から雨という話だったが、まずまず爽やかないい天気だった。8:30に面白山高原の駅を出発し、11:00に頂上。11:35出発で、13:00権現様峠、16:00駅にゴール。

 南面白山などというのはさほど面白い山だとは思っていなかったが、今日はよかった。何よりも、新緑のブナ林、そして下山路の沢が美しく、花(イワカガミ、ニリンソウシラネアオイタムシバなど)もほどほどに咲いていた。濃厚な自然に、どっぷりと身を浸した気分になれた。

 二口沢・大東岳から面白山高原にかけてというのは、山の深さを感じることが出来る地域である。傾斜が急で、地形が厳しく、森が深くてうっそうとしているからそう感じるのだと思う。一部の人通りが多い場所を除くと、登山道も荒れている。山寺から二口峠に登る道は、もはや使用不能になったらしいし、糸岳から北石橋に下りる道は、かつて生徒を連れて行ってひどい目に遭ったことがある。大東岳を北側に下って権現様峠に至る道も気息奄々、いつ消えてもおかしくない。だからこそ、山登りを一種の冒険と考えている人にとっては、魅力的な場所だとも言える。もっとも、今日は、「冒険」などというつもりは一切なかった。

 当初の計画では、奥新川峠から下山することになっていたが、電車の時刻の問題もあったので、権現様峠から下山することにした。この道が決してよい道ではないことは知っていた。道を見失う可能性こそないものの、急斜面に人一人がかろうじて歩ける程度の踏み跡があり、間違って足を滑らせれば数十メートル落ちる、という場所もある。今日は、初めて山に登ったという女子生徒がいて、この子が少しバテ気味だったので、下山を始めて間もなく、何とか電車に間に合わせるプランはあきらめ、安全第一の慎重な下山となった。

 駅に着いた頃には、すっかり雲がかかり、怪しげな風が吹いて、いかにも雨が降り出しそうな天気になっていた。最後のミーティングでも、素晴らしい新緑のブナ林だったとか、沢が美しかった、とかいう感想は出ず、いったい高校生は今日の山で何を感じたのか心細くなってくるほどだったが、彼らなりの充実感はあったようだ。何より、今日初めて山に登り、バテた上に、細く急な山道で恐い思いをした女子生徒が、「懲りたか?」と尋ねると、強く首を横に振っていたことに、その充実はよく表れていただろう。少し疲れたことも含めて、いい一日であった。