石巻市復興計画についての意見交換会



 今夜、門脇中学校で開かれた「石巻市震災復興基本計画(素案)に関する意見交換会」というのに出席した。11月15日から27日までの間に、石巻市内14カ所で開かれる意見交換会の第2回である。なにしろ、ここは、石巻で最も被害が大きく、今後は住宅地にしないという方針が早くから示されていた南浜町を抱えるので、なかなか大変な会になるだろうなと予想していたが、果たして、その通りであった。

 閑古鳥が鳴いていた門脇小学校についての説明会(11月1日記事参照)と違って、今日は、250ほど椅子を用意したのに対して、5〜600人が詰めかけた。全ての会場なのか、ここだからなのか、市長もご臨席である。

 19:00に開会し、最初に、20分ほどで、担当者から「素案」と「北上川の河川整備について」の説明があり、その後、質疑応答に移った。後者には触れないが、前者は、この地域について言えば、南浜町を公園とし、「八間道路」と言われている道から北側は、住宅地として再整備する、海岸には7.2mの防潮堤を築き、八間道路は高さ5m、幅50mほどの盛土状にする、というのが骨子だ。今までもずいぶん語られ、報道されてきたことなので、耳新しい話は何もない。

しばらく質疑が続いたが、20:15頃から席を立つ人が目立って増え始めた。ここまでの間に、何度か繰り返されたのは、一つが、南浜町の土地は市が買い取ってくれるのか?値段はいくらか?というものであった。市は、価格決定のルールについて、出資者である国が方針を決めていないので、何とも言えない、と答えた。もう一つは、移転のための代替え地はどうなるのか?それはくれるのか?買うのか?というものである。市の答えは、蛇田と鹿妻の農地を住宅地に転用して、合計2500戸分程度の代替え地を用意し、売るか長期に貸す、というものであった。これらの問答が繰り返された時点で、人々がぞろぞろ席を立ったというのは、多くの人がこの二点にのみ関心を持っていたことを物語る。当然かも知れない。

 しかし、この後も長かった。例によって、「南浜町に住みたいので戻れるようにしてくれ」とか、「住民の意見の聴き方が不十分なので、もっと個別の意見を聞いて欲しい」とかいう類が多かった。21:20を過ぎてから、まるで酔っているかのような男が、市の対応の悪さについて、くだを巻くような発言を延々と始めた。市の担当者も対応に苦慮しているようだった。ここで、多くの人が、ぞろぞろと席を立った。市の対応にではなく、男の発言にうんざりしたという表情だった。21:40にようやく閉会となった。その時残っていたのは、100人ほどに過ぎない。

 発言をした人の大半は、南浜町の住人だった。私は、むしろ一般市民の発言に対して言いたいことがたくさんあったが、二つの理由で差し控えた。一つは、家が被災していない自分が発言することが、ひどく場違いで、場合によっては火に油を注ぐことにもなりかねないと思ったからだ。もう一つは、冷静な意見交換ではなく、被災者の自分勝手で感情的な発言ばかりが多かったので、言っても無駄だと思ったからである。

 市長を始め、市の職員は気の毒だと思った。まるで、市が悪いことをしたために、人々が迷惑を被ったかのようである。対応が遅いと批判される一方で、一人一人丁寧に意見を聞け、と攻められる。石巻市にどれほどの被災地があるか、それらの全てに市は公平に対応をすることを迫られていることも考えず、自分たちの利益だけを前面に出し、それが震災による全ての問題であるかのように言う。

 人々が離散した中で、今日、会場から出たように、一人一人の意見を聞き、それをとりまとめる形で文句のでない復興計画を作るなどということは、絶対にあり得ない神業に思える。少なくとも、私には不可能なことだ。この世は難しいと、今更ながらにつくづく思った。

 私はもともと「小さな政府」主義者なので、9月12日に「自己責任で住む」と題し、行政の責任を限定して、人は自己責任で住む場所を決めればよいと書いた。今も、考えは全く変わっていない。南浜町に住みたいという住民の希望を受けて、南浜町が安全な生活の場になるよう、大量の税金を投じて条件整備をする必要などない。どこが快適で、安全か、各自が現状を元に判断して選択し、責任を負えばいいのである。

 延々2時間半以上の会の中で、たった一つ(たった一つである)、私が「これは」と思える発言があった。しかも、この発言に対する参加者の反応も、私にとっては救いであった。最後に紹介しておこう。

石巻は水で育った町だ。安全のためと言って、単に堤防を高くするのではなく、低くして欲しい。(拍手)

 高い堤防に囲まれた町には人が来ない。コンクリートで町を作るのではなく、人で町を作って欲しい。石巻を復興するのは、私たちではなく、今の小中学生だ。だから早く学校を整備して欲しい。(「そーだー!」という声。多くの拍手)

 早く子供を地域に戻すのが、復興のためにはいい。(拍手)」