県立高校「復旧」の怪



 一昨日、宮水に新しい45人乗りのバスが届いた。寄贈者は「経済同友会」である。先月の4日に新しい教習艇(小型船舶操縦士免許を取得するための操船実習用のモーターボート)と船外機付きの和船が寄贈されたが、寄贈者は「日本財団」であった。こうして少しずつ、学校生活が正常化していくのは嬉しいことだが、なんだか変だぞ、と思う。

 仮設校舎内の設備も「玉川学園」を始めとする、一般からの寄贈品が多い。仮設校舎のLANだって、県はやってくれないが、どうしても仕事をする上で必要なので、大変な思いをして宮水の教員が整備した。もともと老朽化していた上、震災の影響でほとんど使えなくなっているPC室のパソコンは、更新が急務として職員間で度々話題になっていたが、結局、「SRA東北」という一私企業が寄贈してくれることになって、1月以降、なんとか授業が出来そうだ。やっぱり、なんだか変だ。一体、県立高校である宮水の復旧のために、県は何をしてくれたのだろう?先月18日に書いたとおり、実習のためにどうしても使わざるを得ない渡波の旧実習棟に、その後も電線の一本さえ引いてはくれないのである。私が鈍いだけなのかと思って、今日、マリンテクノ類型の某先生に尋ねてみたが、やはり、「県がしてくれたこと?何もないよ」と、言下に言い切っていた。

 昨朝、突然聞いた話。昨日から、渡波地区の新しい防潮堤の工事が始まったそうである。なんとびっくり、そのために宮水の艇庫は取り壊しになるらしい。しかも、中に入っている物の保管場所は自分たちで探してくれ、ということだ。開いた口がふさがらない。

 いちいち腹を立てていたら疲れるし、腹を立てても何もしてくれないのが分かっているので、教員はせいぜい失笑するか、自虐ネタで盛り上がるくらいで、あまり真面目に反応しなくなってしまっている。そして、宮水の教員が車を止めていた場所に新築中の、石巻北高新農業実習棟の作業現場の横を通り過ぎて、数百m離れた校外の駐車場に歩いて向かうのである。なんだか、震災以上に悲劇だと思う。これなら、「宮水はもう要らない」とはっきり言ってくれた方がいいとも思う。

 内部暴露的な話は書かないようにしているのだが、別に機密事項でもないし、これらを機密事項にされたら、逆になぜこれらが機密なのか問題とすべき事だとも思うので、被災地の実情を語る逸話として記録しておこうという気になった。