久しく宮水のことについて書いていなかった。この1ヶ月で、いろいろな変化があったので、新学期が始まる前に書いておこう。
2月の末、渡波の新実習棟に待望の電線が引かれた。これについては、昨年11月18日と今年1月19日に書いたとおり、周囲の民家で電気が復旧した後、長く水産高校だけが陸の孤島となり、実習に大きな支障が出ていたものである。電気が復旧したとは言っても、新実習棟だけ限定100vという中途半端なものだが、それでも気分は大きく変わる。もちろん、たったこれだけのことになぜ11ヶ月もかかったのかという憤りは残る。
卒業式には間に合わなかったが、3月15日、遂に平成23年度卒業生の進路決定率が100%になった。4年連続である。震災直後には、いったいどうなるのだろうか、と心配し、その後は他県からの「同情求人」、更には「復興特需」で、昨年度に関しては、むしろ震災前より就職しやすいかもしれないという楽観的な見方が広がった。しかし、100%が実現しないまま卒業式となり、職員の中に不安がなかったわけではない。これは文句なしに明るい話題である。
3月27日に新しい教習用モーターボート「新スピカ」が進水した。古いスピカが震災で陸に打ち上げられ大破したので、産業教育振興助成という公費によって新造された。3.5tというから、旧スピカ(1.38t)の2倍以上の大きさがあり、225馬力の船外機を搭載、最高速度は38ノット(時速70km弱)というすごい船である。これで、宮水は昨年11月に日本財団から寄贈された「ベガ」とあわせて、モーターボートが震災前を上回る2艇となった。
続いて、3月30日には、材料科学技術振興財団という所から新造の船外機付き和船「北斗」が寄贈された。これで和船も、震災前を上回る3艇体制である。海洋総合科長M先生が、「これらをフルに使えばすごい実習が出来るのに・・・」とおっしゃっていた。「のに・・・」と歯切れの悪い留保が付くのは、岸壁の状況が悪いとか、カッターがいまだに1艇しか使えないとかいうこともあるが、何より、生徒が内陸にいて、容易に海に出られない(海岸に行けない)からである。
今日聞いてびっくりした話、これら充実した船のラインナップに加え、やはり津波で陸に打ち上げられ、プロペラシャフトが曲がるという重傷を負った「みさご」(19t)に代って、カタールの王様から船の寄贈があるそうだ。しかも、この船は、こちらの希望を聞いて今から新造するらしく、大きさについても希望に添うという。聞くところによれば、お隣の岩手県ではなんと150tの船を希望したらしい。更に、さすがは産油国。寄贈後何年間かは、燃料も無制限に保証するというから、産油国の太っ腹にはただただ呆然とするしかない。
PC室には、県によって新しいPCが設置された。40人で使えるように、配線も含めてとなると、非常に大規模な設備であり工事である。おかげで、もともと古かった上、渡波校舎のPC室が避難所として使われることで邪険に扱われ、満身創痍となって使用に耐えないと言われていたPCが一新され、新学期からは充実した授業の展開が期待できそうだ。
と書いてきたソフトに加え、ハード(仮設プレハブ校舎)の改修も行われた。分不相応に広かった昇降口を小さくし、代わりに調理室に準備室が作られた。変な場所にあったために教室の形が不自然になっていた手洗い場が移設され、教室の大きさも均一になった。黒板の向きがまちまちで、黒板が裏表に付いていると隣の教室の音漏れがひどくて授業にならないという不満を受けて、黒板も全て西壁に統一された。もちろん県による措置である。
こうなると、官民あわせて宮水の復旧のために尽力してくれている、宮水の春は明るい、となりそうなものだが、職員は必ずしもそう考えていない。なぜなら、「あれだけ何もしてくれなかった県が、今更プレハブ校舎に金をかけるのは変だ、これはきっと、渡波にはまだまだ戻れないという見通しに立っているに違いない。新聞に発表した約束では、今年度中に渡波に戻るということだが、実は厳しいのではないか?」と想像が進むからである。やっぱり暗〜〜い!