オーシャンキャンパス



 マーラー音楽祭から石巻に戻ると、私は自宅に少し立ち寄っただけで、渡波の水産高校に直行した。なにしろ7月16日は「海の日」で、水産高校は「オーシャンキャンパス」という名の学校開放行事を大々的に開催することになっていたのである。

 マーラー音楽祭の引率については、引き受ける前に、この行事の主たる担当者であるA先生に許可は得てあったものの、実は私も企画者の一員なので、事前の準備に参加できない上、当日も遅刻ではひんしゅくを買う。幸い、間に合わせることが出来た。

 オーシャンキャンパスの企画として、目玉は宮城丸の体験乗船。他に、小型船舶(モーターボート)の体験乗船や水産加工品の試食と販売、各類型の学習内容に関する展示等が行われた。場所は艇庫とその対岸にあるカキ小屋である。

 艇庫の中は、風が通らない。余りにも天気がよくて、名古屋と変わらないなぁ、と思うほど暑い一日だった。

 けっして、お客さんがわんさか詰めかけた、と言うほどの盛況ではなかったけれども、まずまずの賑わいではあった。特に宮城丸の体験乗船に関しては、仙台や大崎はもとより、県外からまで応募があって、宮水への関心の高さが感じられた。

 艇庫は津波の直撃を受けて、大きな扉(の残骸)が取り外されたままになっているし、船などがぶつかって出来た弾痕のような傷もたくさん残っている。一部の窓は、ベニア板が打ち付けられているだけだ。桟橋との間には、地盤沈下による海からの逆流を防ぐための巨大な土嚢が防潮堤のように並べられていて、階段がないと桟橋に下りられない。それでも、雨をしのぐには十分だし、各類型の展示をするには広さも程よく、ロケーションがいいので会場とした。

 艇庫の前で万石浦を眺め、小型船舶体験乗船の受け付けをしながら、遂に宮水も、海辺でイベントが開催できるほど復旧してきたんだなあ、という大きな感慨が沸き起こってきた。私も、人の入りが途絶えた時に、寄贈されてから初めて新「スピカ」に乗せてもらい、女川方面まで万石浦を往復した。本当に久しぶりで出た海の上は、ひどく心地よかった。

 休日にもかかわらず、様々な作業に補助員として関わった生徒諸君は、よく働いていた。やはり宮水生には、座学よりも「仕事」がよく似合う。そんなことも改めて感じさせられた。