光が丘女子高校合唱部の練習



 昨日書いたマーラー音楽祭に先立ち、15日の午前中は、東邦高校で行われていた「サマーセミナー」(←分からない人は、昨年7月20日の記事参照)に行っていた。もともとは、宮城から行った高校生が、愛知ボランティアセンターの講座に参加し、宮城で活動していたボランティアや高校生と交流するという予定だったのである。

 ところが、前日、愛知(犬山)に着いてから企画がボツになったことを知らされ、急に自由な時間が生まれてしまった。お粗末と言えばお粗末な話だが、私は、これ幸いと大喜びで、以前から行ってみたいと思いながら行けずにいた「光が丘女子高校合唱部の練習」(これが講座として設定されているのもすごい!!)を見に行くことにした。

 光が丘女子高校の合唱部とは、なかなか世に知られた存在である。特に昨年度は、全日本合唱コンクール全国大会一般の部で金賞を受賞して(初めてではないはず)、名声が極まった。

 指定された教室に行くと、4名の生徒が前に立ち、「音取り」をしていた。とんでもなく早口で、後から後から指示を出す。私には聞き取れないこともしばしばなので、合唱団のメンバーには分かっているのかなぁ?などと余計な心配をしながら見ていた。メンバーの方は、終始緊張し一糸乱れず、という感じでもなく、各自水を飲んだりしながら、なんとなく雑然としていた。先生は後で見ているだけで、ほとんど口を挟まないのだから、これで合唱が仕上がっていくとなればたいしたものだ、ここまで生徒を鍛えるには大変だったことだろう、どのように指導したのかな、と感心しながら見ていたが、作業が事務的なので、これが丸々1校時(80分)続くと、さすがにうんざりしてきた。

 最中、私がたまたま先生が立っている場所の近くに座っていたこともあってか、先生から突然「どうしてここに来られたのですか?」と質問された。私は、「前から光が丘の練習は見てみたいと思っていたんです」と答えた。答えになっていなかったように思うが、先生は、「だから、なぜ光が丘の練習を見てみたいと思ったんですか?」とは聞かなかった。私以外に20人ほどが、練習を見守っていた。私だけが、なぜ理由を聞かれたのかは分からない。単に女子高生が見たいという変なおじさんに見えたのかも知れないし、他の聴衆は保護者等の関係者だったのかも知れない。

 本部で会いたい(会わなければならない)人もいたので、1校時が終わった所で、退室しようと思っていたら、休憩も取らずに、そのまま先生による練習に流れ込んでしまった。おかげで、先生による練習を見ることが出来たのは、実に幸運だったと思う。

 これはびっくり!!!!先生は、自らピアノを弾きながら指導するのだが、このピアノが唖然とするほど上手いのである(白鳥清子先生という方らしい)。「弾き振り」というほどの動作はない。むしろ、ピアノそれ自体によってぐいぐいと生徒を引っ張る。時々止めては、指示したり、生徒に問いかけ、考えさせたりして、再びピアノを弾き始めた時には、生徒の作る音楽ががらっと変わっている、ということが繰り返された。映像で見たことのあるバーンスタインチェリビダッケによる指導に優るとも劣らない音楽創造のドラマが、間違いなくそこにはあった。前述のような事情で、30分余りで途中退室してしまったが、後ろ髪を引かれる思いであった。

 音楽というのは、本番で完成された形を聴くのもいいが、作り上げられていく過程のドラマの方が感動的である。そんなことを改めて認識した2時間余りであった。