長くて短い1日

 2日続けて気持ちのいい秋晴れが続く。塩釜高校は金土と文化祭だったので、今日は代休。朝から運転免許の更新に行った。今回はどうして葉書来ないのかなぁ?と思いつつ、葉書を持っていない人用の窓口に行き、運転免許を差し出したところ、「平居さん、更新来年ですよ」と言われて仰天した。免許の中央に有効期限がデカデカと書いてあるのに、なぜか私は今年だと思って疑っていなかったのである。思い込みが強いと、確認もしなければ、見えもしないものなのだ、と恐ろしく思った。

 さて、以前から言っているとおり、塩釜高校は東西二つのキャンパスを持つ。西の校舎の方が新しくて大きいからだろう。文化祭は西で行われた。
 私は東勤務である。山岳部は参加しない。だからかも知れないが、事前に文化祭の準備をしているという実感があまりなかった。期待も何も高まってこない。そこで、最初だからまずは観察させてもらおうか、という程度の気分でいた。
 ところが、意外にも退屈することなく2日間を過ごした。土曜日は校内発表。全員体育館で、ステージ発表を見物する。日曜日は一般公開。土曜日とは違うステージ発表の他、教室での展示や物売りなど、いわゆる「文化祭」だ。
 教室展示の方は、ごく一部の部を除き、今ひとつパッとしなかったが、ステージ発表は立派だった。特にダンス部は面白かった。私は今時の若者のダンスというのをほとんど見たことがなかったのだが、ものすごく激しい運動だということがよく分かった。演技を終えた生徒たちは、プールから上がったばかりのような姿で、タオルを手に髪や首筋をぬぐっていた。仙台一高に通っていた時の水泳部「ウォーター・ボーイズ」と同様、若さに対する羨望の混じった感動があった。ダンス部は正式の練習場所を持たず、東キャンパス校舎の廊下や昇降口付近で練習している。顧問はもちろんいるが、指導者がいるようには見えない。それでいて、50人近い部員が、どうしてあんな演技を合わせられるのだろうか?という当惑は、ほとんど敬意に近い。
 吹奏楽部も、合唱部も、演劇部も、音楽部も、それぞれの持ち味があって、好感が持てた。教室発表では、棋道(将棋)部で生徒と勝負してまったく歯が立たなかったこと、琴部の琴の音色がひどく気持ちよかったこと、かな。
 文化祭と言えば、今まで勤めたどの学校でも、物売りに攻められるのが常だった。塩釜高校では、前日までこそ「先生買いに来てね」といろいろな生徒から言われたが、当日はむしろ、約束したからと行ってみると、既に完売というところが多かった。しつこくつきまとわれることはなかった。某先生から、「そりゃぁ、生徒だけで1200人もいれば、少々たくさん仕入れてもはけますよ・・・」と言われて、なるほどと納得した。
 思えば、私が経験した最大の文化祭は仙台一高のもので、ほとんど10,000に近い来場者があったと記憶しているが、それは3日間の数字である。朝から始まって中夜祭だの夜祭だのといって、一般公開時間もやたらと長い。一方、塩釜高校はたったの4時間半だから、一般入場者が何人だったのかは聞いていないが、仮に2000人だったとしても、生徒を合わせると、密度としては一高以上かも知れない。物も売れて当然だ。
 大きな行事の夜は慰労会、というのが当然。いや、当然であるべきだと私は思っているのだが、残念ながらなかった。塩釜高校もまた車で長距離通勤している職員が多く、呑み会はほとんど成り立たないのだ。

 おかげで、と言うべきか、夜はまた石巻で某医師主催のコンサート+酒に出席した。最近ペースが加速しているような気がする。今回は前回(→その時の記事)から1ヶ月も経っていない。マネージメントの仕方が違うらしく、ホールの容量ほとんど一杯、50人近い客が集まった。
 今回やって来たのは、前回と同じくヴァイオリン+ピアノで、小林正枝さんとゲルティンガー祥子さん。小林さんはドイツのブランデンブルク州管弦楽団第2ヴァイオリン・ソロ首席奏者、祥子さんはソロピアニストである。ほとんどファミリーコンサートの出演者にしては大物だが、小林さんはお母さんが、祥子さんはご自身が石巻出身という縁で、出演ということになったらしい。
 曲目は、以下の通り。
クライスラー「美しきロスマリン」
ベートーヴェン「ロマンス第2番」
ブラームス ヴァイオリンソナタ第1番「雨の歌」
・マスカーニ 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
・ポルティーニ「踊る人形」
フォーレ「夢のあとに」
・シャミナード「スペインのセレナーデ」
サラサーテカルメン幻想曲」
・(アンコール)サルトリ「別れの時に」
 このコンサートとしては珍しく、小林さんはすべて暗譜。堂々たる弾きっぷりであった。まったく安心して聴いていられる。ベストはブラームスかな?例によって終演後に開かれた宴席(演奏者を入れて10名)では、とりあえずあと2回石巻に来て、そのたびに1曲ずつブラームスソナタを弾いてくださいよ、とおねだり。音楽だけではなく、地元石巻のローカルな話も含めて、話は楽しく続いた。
 盛りだくさんで、長く短い1日であった。