悲劇の宮城丸とF3課題研究発表会



(1月29日付学級通信より)


 なんとも雪のたくさん降る冬である。一昨日の大雪は、日曜日で本当によかった。平日の感覚で渋滞を予想し、車で外出するのを控えたのだろう。私が10時に外出した時、道路は信じられないほど車が走っていなかった。

 私が行ったのは、ヤマニシに停泊、修理中の宮城丸である。海技資格取得のためには乗船履歴が必要だが、船が動いていなくても、船に乗っていれば履歴が付くので、T2の諸君は下船を許されていない。そろそろ相当にストレスも溜まっているだろうから、また「平居先生でも、会えて嬉しい」くらいのことは言ってくれるのではないか(←1月17日記事参照)と、子どもの船見物も兼ねて訪ねたのである。

 船に乗ると、乗組員がやって来て、船内は立ち入り禁止だ、乗船実習指導教員を呼んでくるので待っていて欲しい、と言う。変だな?と思いながら待っていると、間もなく、S先生とM先生が出て来てくれた。

 この1週間で8人もの生徒が感染性胃腸炎にかかり、中には日赤で点滴を受けている生徒もいる、そこで、外部の人に感染させないためにも、外部から新たにインフルエンザが持ち込まれないようにするためにも、外部の人ととの接触を完全にシャットアウトすることにした、とS先生が説明してくれた。

 出港の見通しは立っていない。このままだと、延縄実習はまったく出来ず、単にハワイを往復するだけの遠洋航海実習になるかも知れない、との話が聞こえ始めた。仕方がないとは言え、気の毒だ。船は運命共同体である。


【自分がしたことは自信を持って語れる・・・F3課題研究発表会】

 多分憶えていないと思うけど、昨年10月11日のこのプリントで、「全国水産・海洋系高等学校生徒研究東北大会」の校内リハーサルについて書き、それを「水産高校の楽しさ」と評した。通常の教科学習が、オリジナルな研究に直結しているからである。

 さて、先週木曜日の3〜4校時は、F(食品科学類型)3年の「課題研究発表会」が行われた。私は、たまたま自分の授業がなかったので、2時間とも出席した。3校時はF2、4校時は更に1年生のF選択者も出席、私のような類型外の教員数名と、何かの都合で宇和島水産高校の先生2名もご臨席で、なかなか緊張感に満ちた盛大な会となった。

 参考までに、各班のタイトルだけ書いておこう。いささか上滑りでパフォーマンス臭の強いタイトルだが、これは「知的財産権教育」に力を入れすぎた結果である(宮水は現在、その研究指定校)。なお後の( )は、私による補足である。

 ・塩がもたらす復興の力(商品価値の高い藻塩作りの研究)

 ・たらこ新報〜復興への道(たらこ生産量日本一に返り咲くために)

 ・浜物語〜未利用魚と歩んだ日々(コノシロ、アオの新しい食べ方)

 ・六次だよ!産業革命(カキの新加工品開発)

 ・Sea Sweets project (海産物を使ったスイーツの開発)

 ・野菜DEスイーツ(子供の野菜嫌いをなくすための野菜加工法)

 研究の内容についてはともかく、私が文句なしにすばらしいと思ったのは、パワーポイントによる資料と説明の仕方であった。もう少しもじもじと、分かりにくい発表をするのかと思っていたが、どの班も非常にはきはきと、よく聞こえる声で、明瞭な発表をしていた。質問への受け答えも合格点。

 思うに、彼らは、先生から何かを与えられて発表をしているのではない。授業の枠内とは言え、自分たちが主体的に行った研究だからこそ、研究のプロセスも結果も問題点もよく把握できており、しっかりとした発表が出来たのだ。

 プレゼンテーション能力の大切さということがよく言われるけれど、内容を抜きにしてそんな能力があるわけではない。自分で能動的に考え行動し、語るべきことを持った上でのプレゼンテーション能力なのだ。そんなことをつくづく感じさせられた2時間だった。

(続く)