結果オーライ・・・雪の船形山新歓山行



 この2日間、山へ行っていた。船形山(1500メートル)である。

 かつて顧問をしていた某高校山岳部に、今年は10名という大量入部があった。あわてて、OB会名簿を見てみると、なんと約40年ぶりの出来事である。しかも、そのうち5名は、史上初の女子部員である。だからのこのこ付いて行った、というわけではない。

 私も一応「コーチ」という肩書きを持っているし、そのコーチ陣に、今春から2年前の卒業生T君が加わった。今回の山行は、もともと27〜28日に設定されていて、私は学校行事の関係で行けないので、新コーチT君の初引率と決まっていた。ところが、日程が変更になって都合が付く上、目的地が雪まだ深い船形山と聞いて、初引率のT君には少し気の毒だな、と思ったので、付いて行くことにした、というわけである。

 私が最も心配していたのは、升沢小屋に泊まるという点であった。この小屋は、収容可能人数が15名である。今回我々一行は、2名の欠席者が出たが、それでも15名である。一人でも他の宿泊者がいたら・・・、いや、貸し切りだったとしてもかなり窮屈だ。かつて2度ばかり経験があるのだが、満員を越えた山小屋というのは地獄である。一応、テントを少なくともひと張りは持つように、と言ってはみたものの、まぁ「ばくち」だ。寒い雪原でツェルト(簡易テント)に寝るのを覚悟しながら行った。

 4月末とは言え、一度天気が崩れると、雨もみぞれも雪もあり得る。残雪がどの程度残っているかというのも気がかりだったが、これについては、予想をはるかに超え、小屋付近でも1.5メートル、掘っても水場が出てこないという状況だった。加えて、昨日は冷たい風がビュービューと吹いていた。

 同宿者は2名であった。テントをひと張り持参したのに救われ、かろうじて床上に全員寝ることが出来た。風は、夜中も狂ったように吹いた。新築して10年あまりの立派な木造小屋が、一晩中、ギーギーときしみ続けていた。

 夜が明けると、雲ひとつない快晴で、風もかなり弱くなっていた。サブザックで頂上を目指す。夏道に沿って、1時間もかからず頂上に立つことが出来た。頂上小屋の内部で、気温は1度。頂上付近のミネザクラやハイマツには霧氷の花が咲き、道標や石には小さいながらもエビのしっぽが付いていた。空気の透明感がなく、栗駒山鳥海山朝日連峰といった遠くの山々は見えなかったけれど、月山や蔵王連峰はよく見えた。帰路は、雪の上を「尻セード」に興じ、大喜びのうちに、わずか30分で山小屋に戻った。

 この後、気温がどんどん上がった上、私たちは高度を下げたのだから、その変化たるや大きく、真冬から初夏までの季節を通り過ぎた感じがした。11:30に下山した旗坂野営場では、もはや升沢小屋付近の冬の景色を想像することさえ出来ない。

 初めての山登りで、素晴らしい天気に恵まれ、いろいろな季節の山を体験できた1年生はご機嫌だった。こういうのを「結果オーライ」と言うのであろう。生徒たちの満面の笑顔とは反対に、私は薄氷を踏み、それをかろうじて無事に渡りきったような、そんな気分でいた。それでも、好天の雪山はやっぱり美しい!!