東京カランコロン



 かれこれ1ヶ月ほど前の話、私が「遠足」の下見に行って、学校を留守にしていた時に、エイベックスという会社の何とかさんから学校に電話があった。翌日教頭から聞いた話によれば、エイベックスとは有名な音楽事務所(芸能プロダクション)で、そこからデビューした「東京カランコロン」というグループに、石巻高校時代の私の教え子がいる、彼が、高校時代の先生で最も印象に残っている人物として私の名前を挙げたので、ぜひ師弟対談をお願いしたい、ということであった。「教え子」の名前を聞いてびっくり仰天、よく憶えてはいるが、芸能界とかアーチストとかいった印象ではないのである。控えめで、地味な生徒であった(と思う)。年に10回くらいある、「あの子がこうなったの?!」という驚きの中でもスーパーヘビー級に属する。同僚は「平居先生にあのエイベックスから電話かかってくるの?すご〜い!!」などと言っている。申し訳ないが、EMIやらドイツグラモフォンやらに馴染みの深い私は、エイベックス自体を知らない(アイベックスエアラインなら、昔、大阪に行くのに乗ったことがある・・・笑)。対談をして、それを何に使うのかもよく分からない。私の顔では宣伝にもならない。

 数日後、再び電話があった。会議中で出られなかった。それからは音沙汰がない。音楽事務所が中に入っての対談とか、アーチストとか、エイベックスとかにはさほど興味は無いが、あの「教え子」には会ってみたいなぁ、とは思う。「興味が無い」とは書いたものの、それは「有名な存在」に興味が無いだけで、自分とかけ離れた知らない世界に対する好奇心は少しうずく。

 卒業生の中には、バンドからクラシックまで、音楽を志していた生徒がたくさんいるけれど、それで食べられるようになった、という話はほとんど聞かない(当たり前)。多分、それは、想像しても想像しても想像しきれないほどすごいことなのだろうと思う。まだCDさえ買っていないけれど、密かに応援はしていこう。