リニア新幹線と「北斗星」



 今日の『読売新聞』で、寝台特急北斗星」(上野〜札幌)の廃止が、来年3月になったことを知った。青函トンネル北海道新幹線仕様にすると、電圧が5000ボルト低く、軌間が40センチ近く狭い既存の車両は通過できなくなるため、新たな車両を作らない限り廃止が確実、JRは新車両を開発する気がない、という報道は、しばらく前からあった(→その時の私見)が、いよいよ来たか、以前言われていたよりずいぶん早いな、との思いを抱きながら、記事に見入った。

 大阪と札幌を結ぶ日本一の長距離列車「トワイライトエクスプレス」も、来年3月末の廃止が決まっているので、日本国内を走る寝台列車は「カシオペア」と「サンライズ出雲サンライズ瀬戸」だけになる。その「カシオペア」も、「北斗星」と同じ区間を走る以上、車両規格に関する事情は同じなので、多少後になるというだけで、廃止になることは間違いないだろう。最後に残るのは「サンライズ出雲・瀬戸」(東京〜出雲市・高松)だ。

 ところが、残念なことに、続々と廃止される札幌行きは「客車(機関車が引っ張る)」で、生き残る「サンライズ出雲・瀬戸」は「電車」だ。私は、これまでもたびたび、日本の線路から客車が消えていくことを嘆いていた。乗り心地の快適さと、旅情を感じさせるという点において、「客車」は「電車」「ディーゼル車」よりも圧倒的にポイントが高い。編成(車両数)が長ければ、燃費においても優位らしい。そのため、ヨーロッパでは、今でも「客車」が主流なのに、日本では、おそらく1980年頃から「客車」は廃止の方向に進み始め、今や「北斗星」など上に挙げた寝台列車以外に、「客車」は存在しない。おそらくは、「電車」の方が加減速性能がよくて、高速運転がしやすく、機関車の付け替えという面倒がないからだろう。要は「効率」なのである。「北斗星」「トワイライトエクスプレス」、やがて間違いなくやって来る「カシオペア」の廃止は、日本における「客車」の終焉である(JR九州の「ななつぼし」のように特殊な列車を除く)が、それは効率至上主義が日本制覇を成し遂げる瞬間でもある。もはや、鉄道旅行らしい鉄道旅行がしたければ、外国に行くしかないようだ。

 ほとんど同じような時期に、リニア新幹線の工事が始まるというのは象徴的である。交通手段は、少しでも早く目的地に到達する以外に価値基準がない。世の中には、それを喜ぶ人の方が圧倒的に多いのだろう。電気を大量に消費することに抵抗がなく、途中の景色にも、駅の風情にも、ましてレールの継ぎ目のリズムなどに価値はない。やはり私は天の邪鬼で、私がいいと思うものを、人はいいと思わないのだな、逆もまた真、との思いを新たにした。

 こんなことを考えていると、「金、金、金・・・」、「金」以外に価値基準のない世の中が思い浮かぶ。同時に、やはり、私が大嫌いな自民党は、今度の選挙でも圧勝するに違いない、という予感が強くなってきた。