楽しいラクダ・・・ラボ・トーク第6回

 金曜日の夜は、ラボ・トーク(→説明)の第6回であった。今回の講演者は、我が共同発起人会のボス・坂田隆先生である。もともと依頼するつもりであった人とうまく調整しきれなかったという消極的理由と、今までのラボ・トーク参加者から、坂田先生のお話をぜひ聞いてみたい、という熱いリクエストが寄せられていたという積極的理由による。演題は「ラクダが砂漠で生きる仕組み」。坂田先生は、もともとドイツの大学やヤクルトの中央研究所で大腸を中心とする消化器官の研究(比較栄養生理学と言うのだそうな)を行っておられた方だが、その研究対象の一つとしてラクダに注目し、近年は、ラクダと人間との関わりといった文化史的な側面も含めて研究しておられる。身近な所にいて、一緒に遊んでいただけるのが不相応な国際級の研究者である。
 私は坂田先生の『砂漠のラクダはなぜ太陽に向く?−身近な比較動物生理学』(講談社ブルーバックス、1991年)、『人間と自然環境の世界誌−知の融合への試み』(井上幸孝・佐藤暢編、専修大学出版局、2017年)の第4講「ラクダにたよる人間の生活」といった書物、或いは日頃の雑談で、ラクダについてある程度のことは予備知識として持っていた。だから、それほど目新しいお話があったわけではない。が、とにかくお話は明快。まるで、「ラボ・トークかくあるべし」といった感じのお手本的なお話であった。内容があって話が面白いだけに、45分間で終了した時には、「え?もう終わりですか?」という物足りなさが残ったほどだった。
 講演の後はいつも通りの宴会。もう一人の主催者、カンケイマルラボの須田さんが、あの手この手で美味しいお料理を作ってくれる。講演も参加者も、お料理もお酒も申し分ない。これほど楽しく飲める条件がそろうことはそうそうない。
 ところで、この日のメインディッシュ(?)は、なんとびっくり「ラクダ肉」であった。前の週の土曜日に、私が仙台市旭ヶ丘(最寄り駅は地下鉄・黒松駅=徒歩10分)の「肉のささき」で買ってきたものだ。「肉のささき」というのは、「肉の動物園」を自称している、知る人ぞ知るマニアックな肉屋である。鮮やかな蛍光色の色紙に「ワニ」「カンガルー」「ラクダ」「だちょう」など、およそ他の肉屋では手に入りそうにない珍しい動物の名前を書いて店の周囲に貼り出しているので、一見してそれと分かる。私は昔からその存在を知っていたが、一度も肉を買ったことはなかった。今回、講演のテーマが「ラクダ」だということで、通常の飲食経費とは別枠のお金の支出を共同発起人会で決定し、ラクダ肉を買うことにしたのである。当然冷凍なので、量り売りはしてもらえないが、100gあたりで税別550円。なかなかの値段だ。焼き肉用にスライスした状態で、パックに入れて売っている。約30切れ、3900円分を購入した。脂身をほとんど含まない赤身の肉で、お店によれば、オーストラリア産だそうである。種類や部位は分からない。
 ホットプレートで焼いて、塩こしょうで食べた。堅い!噛んでも噛んでも噛み切れない。いかにも「ラクダ」という特徴はないが、いわゆる肉の味は濃厚だ。私が、「まるでインド・ネパールで食べるバフ(水牛)・ステーキかチベットのヤク・ステーキのようだ」と言うと、インド学の専門家である千葉一先生(→説明)が大きく頷きながら「私もそう思っていました」と賛意を示して下さったので、それらを食べたことがある人は、そう思っていただけると間違いがない。
 今回のラボ・トークには、共同研究のために石巻専修大学に来ていたカナダ人化学者や、北陸地方の某大学教授なども参加していた。気仙沼や古川からの参加者もいる。小さな会だし、主催者の一人として、別に、地球上のあらゆる場所から参加を募りたい、などという積極的な気持ちがあるわけではないけれど、ついでであれ何であれ、そのような方々が参加して、会を刺激してくれるのはとても嬉しい。ラボ・トークは今後どのように育っていくだろうか?