おしょろ丸(2)

 事前に送付されてきた資料の中には、スケジュール表も入っていた。15分刻みの、なかなか過密なスケジュールだ。およそ次の通りである(以下は当日受け付け時に配られた改訂版)。

初日(8月17日)
10:00船内旅行−組織説明−退船操練(避難訓練)−実習項目に関する講義−水中音響に関する講義−水中音響機器実習−音響バッファー−CTD採水−操船−イカ釣り説明−イカ解剖−イカ釣り−実習項目に関する講義2(今日のまとめ)21:30終了

2日目(8月18日)
8:00漂流ビン−目視−プランクトン採集・観察−海洋観測データ解析−ソリネット−底生生物観察−ROV説明・観察−水産科学を題材とした初修英語教育法の紹介と新たなる実習プログラムの検討−イカ釣り実習−本日のまとめ21:00終了

3日目(8月19日)
8:00荷物整理・下船準備−グループ発表−総評−修了認定試験−アンケート作成11:30終了・下船

 これらの中で、時間の都合で割愛したのは2日目の「目視」。一方、私の強い希望で加えてくれたのが「機関見学」である。また、これらの実習スケジュールの他に、ゲスト乗船者全体を4つの班に分け、当番がある。配膳当番を1回、食器洗いを1〜2回、居室以外の掃除を2回担当する。更に、宿題が出ていて、それについて最終日に発表をしなければならないものだから、その準備もしなければならない。中途半端に暇な時間が突然出来たりはするものの、本当に忙しかった。
 事前の資料には、「禁酒がベスト」とはしつつも、「飲酒は23時まで所定の場所で可」と書いてあったので、いろいろな所から人が集まって来るわけだし、地酒の一本も持って行くのは常識であり礼儀だろうと、私は苦労して「純米酒 日高見」を1升持参した。驚いたことに、私以外の誰も酒を持ってきていないだけでなく、レポート作成に忙しくて呑む暇もない、といった風であった。2日目の夜に、わずか4〜5人でようやく一瓶を空にすることが出来た。最近の教員は、とにかく真面目なのである。
 内容の一つ一つを説明は出来ないが、要は、様々な海洋観測、海洋調査の総花的なつまみ食いである。CTDによる採水にしても、プランクトンネットによる採集作業にしても、ROV(遠隔操作型無人探査機)による海底観察にしても、実物・実際を見る機会というのはなかなかないわけだから、それぞれについて30分とか1時間といった「さわり」だけの講義・実習ではあったが、どれもこれも興味深かった。
 最も面白かったのは、イカの解剖とイカ釣りである。これは、講義を担当した山本潤先生という方の人柄の面白さも大きく関係しているかも知れない。が、ともかく、イカの解剖は赤い血液が出てこない上、組織も大きく、とても分かりやすかった。
 ただでさえもイカは不漁が叫ばれ、私たちが乗船する前日には、ついに、駅弁人気日本一、森駅の「イカめし」が大幅値上げを余儀なくされたというニュースまで流れたので、本当に函館湾の入り口でイカなんで釣れるのかな?と半信半疑だったが、意外に釣れた。私は初日こそゼロだったが、2日目に型のいいイカを2匹釣った。疑似餌が3本付いた糸を2人で担当し、「しゃくり」という方法で釣るのだが、何しろ、準備と後片付けを含めて1時間なので、自分が糸を握っている時間は、正味20分強といったところである。そう思うと、2日間計40分で2匹というのは、さほど悪い結果とは思われない。
 イカとサバは全然違っていて、いわゆる「あたり」が来ない。いつ針にかかったのかはよく分からないのである。2匹目の時は、非常に大きなイカだったこともあって、少し重くなったような気がしたので上げてみたらかかっていた。上がってくる途中でバタバタ暴れたりもしない。釣りの醍醐味はない。船に引き上げる途中で墨を吐いたりする。疑似餌の針には返しが付いていないので、針を逆さまにすると簡単に落ちる。甲板の生け簀にぽんと放り込む。生け簀の中でイカが泳ぐ姿は愛嬌があって面白い。皮膚の色が変わる様子も感動的だ。甲板員の人が、その場でさばいて刺身にしてくれる。美味!!(続く)