アメリカの「今」ファースト

 アメリカはカリフォルニアで、大規模な山火事が発生した。消えない、消えない、という報道はたくさんあったが、消えたという報道のないままに、この2〜3日、なぜかニュースにならない。
 なぜこれほど大規模な山火事が起こったかについては、いろいろと分析されているようで、私も多少の解説は耳にしたが、乾燥した熱風が吹いたとなれば、温暖化との関係が取りざたされるのも当然である。
 日曜日の河北新報で、今年のアメリカの気象被害が既に3000億ドル(34兆円)に達した、という記事を読んだ。巨大な3つのハリケーンに76回の山火事を加えた災害による経済損失だそうだ。10億ドルを超える損害をもたらした災害が、過去10年で約90回、損失合計は4200億ドル、その前の20年間における異常気象による損害は3600億ドルだそうである。確認するが、3000億ドルは今年9ヶ月半の、である。尋常ではない。
 申し訳ないが、いい気味だ、と思う。なにしろ、大統領閣下が自ら、人間の経済活動と温暖化の因果関係を否定し、総量で世界第2位、1人当たりで世界第1位の二酸化炭素排出国でありながら、パリ協定からも脱退したのだから・・・。
 アメリカ・ファーストは、とりあえずいいことにしよう。だが、トランプ氏が考えるようなアメリカ・ファーストは、今現在のアメリカにとっていいことに過ぎず、それが直ちに将来のアメリカにとってもいいことであるとは限らない。良くも悪くも地球上は全てつながっており、いくらアメリカの中だけに目を向けていても、その影響は他国に及び、回り回って再びアメリカに戻ってくる。増幅されることだってある。「情けは人のためならず。」人間は一人では生きていけないように出来ているのだ。
 極めて近視眼的な、目先の利益ばかりを追求する姿勢は、アメリカだけのものではない。日本でもまた同様である。ただ、首相が「日本第一!」と言わないだけの話だ。言わないだけアメリカよりマシ?・・・いやいや、そんなことはない。日本は地下資源を持たず、食糧自給率も低く、市場規模も限られているから閉じこもっていられないだけの話であって、それらが満足すべき水準にあれば、アメリカ以上の閉鎖性を発揮するかも知れないのである。少なくとも、アメリカのようにはならない、と言える根拠は何もない。ただもうかればいい・・・それだけ。
 日本でもゲリラ豪雨の被害が年々ひどくなっている。1時間に50ミリ以上の雨が降る頻度は、1976〜85年の10年間と、2007〜2016年の10年間を比べてみると、約3割増加しているという(8月15日河北)。どう考えても海水温の上昇と無関係とは思えないが、それでも、それを温暖化と結び付ける積極的な報道に接することはまれである。おそらくアメリカも同様であろう。自分たちにとって都合のいい情報ばかりを求めて、不都合な情報からは目をそらす。それが人間というものだ。カエサルがそのようなことを言ってから既に2000年あまり。残念だが、人間は少しも賢くならない。