広告新記録?!

 私がそのことを気にし始めたのは、先月の半ばであった。「そのこと」とは、2月18日に東北大学萩ホールで行われる東京混声合唱団(東混)演奏会の広告が、あまりにも頻繁に河北新報に掲載されること、である。ほとんど毎日、縦7㎝×横19㎝(以下「小さい方」とする)、あるいは縦17㎝×横19㎝(以下「大きい方」とする)という大きな広告が載るのである。その現象は、1月に入っても続いている。
 東混に加えて、指揮・山田和樹、ピアノ・萩原麻未という超豪華キャストだ。チケットはS席5200円、A席4500円、S席の方が相当数多いはずなので、平均5000円といったところだろう。ところが、曲目は至ってポピュラーな歌が並んでいる。「地球に乗ってどこまでも」「翼をください」「上を向いて歩こう」といった感じだ。う〜ん、最初に広告を見た瞬間に、これはおそらく売れないな、と思った。確かに、ポピュラーであるが上にもポピュラーな曲だからこそ、一流のすごさは際立つ、とは思ってみるものの、チケットが5000円ともなるとやはり、誰でも口ずさめるような曲ではなく、一流でなければ歌えないような曲、通好みの曲、例えばパレストリーナとかシュッツとかをやって欲しい、と思う人しか行かないものなのだ。
 私の予想は当たっていると見えて、「好評発売中」と書いてありながら、チケットはいつまでも売り切れないらしい。今も「チケットぴあ」で見てみると、S席、A席ともに○(残席余裕あり)が付いている。連日の大広告は、そのことと関係があるのだろう。
 気になったので、チケットが売り出された11月10日から、今日1月18日までの河北新報を調べてみた。すると、ほとんど毎日だとばかり思っていた広告は、意外に少なかったが、それでも、新聞休刊日を除く67日で、ほぼ半分の32日掲載されている。同じ日に、普通の広告と、TBCや河北新報社がイベント情報のような形でいくつかの広告をまとめて載せるチケットインフォメーションコーナー(以下「インフォ」)の広告と、2種類掲載された日が4日あるので、広告の数としては日数の半分を超える36である(大雑把な調べなので見落としあるかも。しかし、重複は絶対ないので、36は「最低でも」だ)。
 広告の掲載料というのは、何曜日のどの位置に載せるかによって変わるので、ひどく計算しにくい。ま、だいたいのところで、66㎜×52.5㎜という標準枠≒25万円として計算すると、「インフォ」を除き、「小さい方」と「大きい方」合わせて24回で3000万円を少し超える。チケット平均5000円として割ると、6000枚分となる。「インフォ」の分(カラーもある)も計算すると、プラス500万円近くで、広告のためだけに更に1000枚売る必要が生じる。つまり、既にチケット7000枚分のお金が、広告に費やされたことになる。この計算がどれだけ正しいかは知らないが・・・。ちなみに、萩ホールの定員は約1200だ(笑)。
 もちろんあり得ない。出演者のギャラ、交通費、会場費、運営スタッフの日当といったことを考えるとなおさらである。河北新報社が主催者の一人(?)となっているから、おそらく空いたスペースを利用して、広告料を考えずに出し続けている、ということに違いない。
 他愛もないことなのだけれど、こうして調べながらあれこれ考えるのは面白い。それにしても、演奏会まであとちょうど1ヶ月。広告の数はどこまで増えるだろうか。これは記録的なのではないだろうか。そんなことだけさんざん楽しませてもらって・・・申し訳ないけど、私も行かない。