燃料税・消費税=増税

 そう言えば、今更ながら先月の休筆期間中にあった出来事では、フランスのデモ騒ぎが気になった。マクロン政権が、環境政策の一環として燃料税の引き上げを表明したところ、フランス全土で反政府デモが起こり、支持率が急降下した、という事件だ。
 このような事件の概要は、どんなメディアの報道にもあったけれど、では、燃料税をいったい何%引き上げようとしているのか、今回のデモの背後にあるらしい、燃料税引き上げ以外の諸政策についてまで触れたものにはほとんどお目にかかれなかった。
 12月5日の朝日新聞によれば、ガソリン税を1リットルあたり約4円、軽油税を約8円引き上げる予定だったという。え!?たったこれだけ?拍子抜けしてしまうような些細な値上げだ。私は、段階的にではあるが、ガソリンを1リットル500円くらいにしたらいいのに、と前々から言っている(例えば→こちら)。5円前後の値上げで暴動に近い事態が引き起こされるのだから、500円、すなわち約350円の値上げというのは天文学的なレベルであり、言っている私の暗殺は避けられない(笑)。
 もっとも、この増税案だけでデモが起きたわけではない。マクロン政権が、法人減税や労働者を解雇しやすくする労働法の改正など、多くの国民が富裕層向けと感じる政策を実行してきたため、燃料税の増税で国民の不満が限界を超え、一気に暴動化してしまったらしい。
 あれれ、法人減税や労働者を解雇しやすくする法律などは、どこか身近で聞いたことのある話だ。しかし、一方の国では政権の支持率も下がらず、暴動も起きる気配がない。半分は(あくまでも半分は)、フランス人は偉いな、との思いが兆してくる。
 ところで、増税と言えば、日本の消費増税は、益々奇々怪々なる様相を呈してきた。12月15日付け新聞各紙の報道によれば、政府がまとめた増税と同時に行われる減税規模が1670億円に固まった。これはあくまでも減税分なので、政府が補助すると言っている還元ポイント付与のためのクレジットカード対応費や、様々な宣伝費などは含まれていない。おそらくそれらを合わせると、消費増税に関わるコストはその倍以上になるのではないか?と私は想像していた。そうしたところ、17日から来年度予算編成の大臣折衝というのが始まり、出るわ出るわ、増税による景気失速対策の数々。その額たるや、公共事業が1.3兆円、ポイント還元が2798億円など、全部合わせれば2兆円にもなるという。倍どころの話ではない。消費税を2%引き上げることによる増収は、政府によれば約5.6兆円だが、それは甘い見通しだ、そんなには増えない、という意見もよく耳にする。しかも、来年度の政府予算は、史上初めて100兆円を突破し、一気に101兆円をも超えることになりそうだ。
 そもそも、政府は、増税案が出てきた当初は増収分の4分の3を借金返済に充てると言っていた。それがいつの間にか2分の1に縮小し、さらにはこのような増税による景気減速対策に割かれることになってきた。恐ろしく複雑な軽減税率適用その他のシステムに対する手間というコストを考えると、どう考えても、いったい何のための増税なの?と言いたくなる。消費税を上げると宣言した以上、前言撤回は有言不実行の印象を与えるからまずいが、それを骨抜きにしたい、クレジットカード会社からもたくさん献金をもらっているし・・・といったところだろう。
 私は、借金を返済してしまうことは日本の最優先課題のひとつだという思いから、長く消費増税に賛成派であった。ところが、ある時から消費税という税制そのものに大きな問題がある、増税は必要だが、それが消費税であるのは間違いだ、と考えるようになった(→こちら)。簡単に言ってしまえば、利益と無関係な取引から税を取り立て、納付率が下がること(=滞納率が上がること)は非常にまずい、実際に利益を得ている人から多くを取るべきだ、ということである。それで解決を図るのが、一番シンプルに、確実に収入を増やす方法である。何事においても、シンプル・基本的であることは大切であり、それこそが長く大きな効果を生む。自然の理法である。