税金の原点に立ち返れ



 しばらく休筆していた。旅行期間中を除くと珍しい。たいした理由はない。何しろ今時の学校は長距離通勤が多い上、「綱紀の粛正」とかで、呑んでいても常に誰かに咎められているような気がして楽しくないなどの事情があり、忘年会など立て込みようがない。ネタに困るということもない。あえて言えば、「朝市センター保育園」カンパの宣伝を、目立つ所にしばらく掲げておこう、ということだったかも知れない。(よろしく。それから、Readyforの朝市センター保育園のページを開き、「新着情報」というタグを開くと、なかなか感動的な作文が並んでいる。一読の価値あり。)

 さて、消費税の軽減税率に関する議論が決着を見そうである。

 私は消費税そのものに大反対だ。取るなら所得税であり、法人税である。利益に関係なく取り引きそのものによって税金を取れば、赤字の所からも徴税することになるが、それは税の滞納を生むことになる、実際、消費税の滞納率は他の税に比べて非常に高いらしい、というのがその基本的理由だ。(→こちら

 言うまでもないことだが、税金は、それによって公的サービスを維持するというだけでなく、所得の再配分をする機能がある。利益を多く得ている人からより多くの税金を取り、所得の少ない人に還元することで、社会的な「平等」を実現させるという機能だ。消費税においてしばしば問題とされる「逆累進制」は、この機能を阻害するという意味で、税機能の根幹に関わるのである。

 この間すったもんだしていた軽減税率は、結局、「酒類と外食を除く飲食料品全般」そして「定期購読契約の新聞」に落ち着いたようだ。当初は、新聞がほとんど問題にならなかったので、私はその点を気にしながらニュースを見ていた。新聞社にしてみれば、あまり騒ぐと、自分たちのエゴイズムであるかのように見えて世間の反感を買う、という思いはあっただろう。現に、ネットを見ると、新聞社が消費増税を訴える一方で、知識への課税には反対しているということを、非常に身勝手な態度ととらえる多くの口汚い非難を容易に見付けることができる。自分たちの利害に関わる問題を報道するのは難しい。

 これらの対象品目をどのように考えるべきだろうか?考える基準は、税金の本質、すなわち社会の実質的平等を実現もしくは維持する方向か、阻害する方向か、という点でなければならない。

 その点から見ると、食料品は分かりやすい。しかし、限りなく外食に近い加工品(調理品)を入れること、高級食料品も軽減税率の対象となることについては、疑問を持つ。なんとか上手い線引きをして、高級食品は対象外と出来ないものかと思う。

 新聞については、税の再配分機能で実質的平等を実現するというよりは、民主主義の基本となる投票行動への低所得者の不利を回避し、健全な民主国家を作り上げるために必要だという観点で、軽減税率の対象とすることに賛成だ。全ての人が平等に情報を得ることが出来なければ、社会を理解することも、選挙における選択も出来ないのである。だが、そう思う時、定期購読はいいが一部売りはダメだとか、いくら政治的な情報も含むとは言え、スポーツ紙が対象となるのは理解しにくい。

 実質的平等を目指すと言えば、教育費はどうなるだろう。教育費に関しては、授業料、受験料、教科書代、施設設備費など、多くの項目で消費税導入当初から非課税となっている。しかし、塾、参考書・問題集などには8%の税金がかかっている。私自身は、「一番いい勉強方法は一番金の掛からない勉強方法だ」という主義者なので、自分自身(我が子も含む)の問題としては切実でないが、実際に、塾に通っている生徒がこれほど多く(宮水は違うよ=笑)、そのことが偏差値の高い大学への入学率に反映されているということがあるとしたら、本当は対象とすべきなのかな、と思う。

 とは言っても、軽減税率は8%を10%にしない、というだけの話である。その違いは、大騒ぎするほど大きなものには思えない。海外では、消費税率が日本より相当高いので、新聞の税率が5〜10%でも、他品目との比較で相当低いと言える。だが、日本ではそうではない。だとすれば、日本では、心理的、もしくはパフォーマンス的な効果を狙った軽減税率だ、ということになる。それはそれで効果が期待できるのかどうか・・・。いや、やっぱり、そんなことを考えるよりも、消費税自体を廃止して、利益を得ている人から取って貧しい人に回す、それが一番分かりやすく無理がない。