物作りの楽しさ(近刊予告)

 3月ということで、酒を飲む機会が多い。最近、体調が悪くないのをいいことに、飲み方がますます下品(あさましい)で、どうもよくないな、と思っている。音楽を聴いたり、本を読んだりするのにも忙しい。加えて、仕事(新入生受け入れ準備)にも以前より時間を費やしている。が、この10日あまり、休日を中心として、猛烈にエネルギーを費やしていたのが、本の校正だ(本日返送=終了!)。

 年賀状(1月1日記事参照)で予告をしたとおり、私にとって3冊目で、しかも初めて自分の専門分野に関する本を作っているところなのである。この構造的な出版不況下、私の作文を商業ベースの本にしてくれる会社が繰り返し現れるというのは、なんとも幸せなことである。こんな体験をできる人間は限られている。そんな幸せを噛みしめながら、それでも、後から後から見つかる問題点の解決に頭を抱えつつ、ひたすら机に向かっていた。

 校正と聞いて、誤字や「てにをは」の訂正を思い浮かべてはいけない。編集者からも、「ここが分かりにくい」「ここに例を入れてもっと具体的に」などなど、多くの要望が寄せられるし、自分自身でも、「あれ?どうしてこんなこと言えるんだっけ?」とか、「この資料の読み方本当に正しいかな?」とか、後から後から新たに問題を見付け、そのたびに書架の前を行ったり来たりしながら解決を図る。ふと気が付けば、2時間や3時間は、一瞬にして過ぎている。そして、既に2校だというのに、ゲラは真っ赤で、大幅な手直しや加筆箇所のデータを8ページ分も送ることになってしまった。

 大変と言えば実に大変。それでも、本を作るという作業は楽しい。いや、これは「本作り」ではなく、「物作り」の楽しさなのだろう。何もなかったところから、手間を費やすことで、形あるものが生まれてくる。それを楽しいと感じるのは、おそらく本能なのだな。

 ところで、2校に先立ち、書店配信用のチラシというのも作った。編集者が作った原案に私が手を加え、意見交換をしながら数日かかった。年賀状に拙著の刊行を「今春」などと書いたものだから、「既に3月も終わろうとしているが、『今春』とはいつのことだ?」という問い合わせも何人かからいただいていることなので、そのチラシをここに貼り付けて予告とする。よろしく。 

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補)5月に入って、定価を3500円に変更することになった。発刊日は7月10日になった。