グリーンランド争奪

 アメリカ大統領が、パリ協定からの脱退を表明したことが、それなりに大きなニュースになっている。何を今更、という気がなきにしもあらず。彼は以前から、環境問題には冷淡なのである。と言えば、語弊があるかも知れない。もうかることしか視野に入っていないのである。
 それよりも、今朝の毎日新聞にあったグリーンランドをめぐる話の方が、私には衝撃的だった。おそらくは温暖化の影響で、南極に次ぐ大きな氷床を持つグリーンランドでも、異常気象が続いている。昨年までは真夏でもめったに10℃を超えなかったのに、今年の7月は、連日20℃前後の気温を記録。氷が溶けて、7月だけで琵琶湖7杯分を超える水が海に流出した。氷床が全部溶ければ、世界の海面が約7m上昇する、という。
 これだけでも、十分恐ろしいことなのに、もっと恐ろしいのは、氷が溶けて海や陸地が露出することをこれ幸いと、資源開発と新たな貿易航路の開設を狙い、アメリカがグリーンランドの買収をデンマーク政府に持ちかけるなど、大国によるグリーンランド争奪戦が始まっているという話だ。この期に及んで、この人たちはまだ「豊かさ」を求めるのか?!と、本当に呆れてしまう。「北極圏は覇権争いと競争の場と化した。(同時に)チャンスと富の最前線にある」とは、今年5月のアメリカの国務長官の演説だ。
 やはり気付かないのだな。そして、地球が荒廃し、多くの人が死に直面するか、死んで後、初めて後悔するしか出来ないのだ。政治家が悪いとは言えない。今日、テレビで映し出していた、パリ協定からの離脱を表明するトランプ氏の後ろには、彼の発言を受けて、肯定的にはやし立てる多くのアメリカ人がいた。政治家は誰しも、自ら名乗るだけでは政治家にはなれない。政治家の質は、名もなき多くの一般国民の質を表している。
 人間は、このまま行く所まで行くしかなさそうだ。