「役」は「役」でいいではないか

 女優・沢尻エリカが、薬物使用の疑いで逮捕された。先月、徳井義実所得税にかかわる申告漏れで活動自粛に入った。春にはピエール瀧が、やはり薬物使用で逮捕、有罪判決を受けた。共通するのは、NHKの大河ドラマ出演者だということだ。目立つ番組だけに、彼らが映像に現れるのはいかがなものかと、けっこう大騒ぎになった(なっている)。
 この大騒ぎに、ちょっとした過ちを似非正義漢と言ってよいような人達が袋叩きにする、最近の悪質な「潔癖症」と同質のものを感じるのは、私だけだろうか?
 商品のイメージアップを図るCMの出演については不都合だというのが分かる。CMは「沢尻エリカ」という人そのもので売るわけだからなおさらだ。しかし、ドラマは「役」である。私が特別に鈍感なだけかも知れないが、高倉健吉永小百合級でなければ、基本的に誰が演じているかということはあまり気にせずに見ている。殺人事件でも起こせば、さすがに意識し、気味悪くも思ってドラマに入り込めないだろうけど、さほど多いとも思えない薬物の使用程度であれば、彼女が演じる役を見ながらそんな風に感じたりはしないだろう。腹も立たない。現に、今「韋駄天」で徳井義実を見ても、だからどうしたの?という感じだ。
 罪は罪で反省してもらい、社会的な責任を負ってもらう。だが、既に撮ってしまった映像の撮り直しをするなど考える必要もない。過剰な反応の背後に、おどおどと世間の顔色を窺う雰囲気が感じられるからなおさら、そちらの方が不愉快だ。