検察は信じられるか?・・・袴田事件の有罪立証へ向けて

 今年3月、再審開始が認められた袴田事件について、検察庁が改めて有罪を立証する方向で再審に臨むことが明らかになった。ちょっと信じがたい。今更どんな新しい資料(証拠)を提示できるというのだろう?
 この報に接した時、私の頭にすぐに浮かんだのは、3年前、軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして逮捕・起訴され、初公判の直前になって起訴を取り消された「大川原化工機」という会社のことだ。
 起訴された3人のうち1人が拘留中に亡くなったこともあり、会社は、「立件ありきの不当な捜査で精神的な苦痛を受けた」として国と東京都に賠償を求めていたが、その初公判が先月30日に行われた。その場に会社側の証人として出廷した警視庁の捜査員が、「ねつ造かも知れない」「輸出自体は問題ないと個人的には思っていたが捜査員の欲でそうなった」「立件しなければならないほどの客観的な事実はないのに、これだけの大変な捜査をした、捜査幹部の自分はこうなりたいというのがあったと思う」「(ある職員の「捜査を尽くすべきだ」との意見に対し)『余計なことをするな』と上司から指示され『事件がつぶれて責任とれるのか』と言われた」(全てNHKのHPから引用)などなどと発言したことで、話題になった。簡単に言えば、検察庁のメンツは丸つぶれになったのである。ここで袴田事件の再審にあたり、えん罪を認めるわけにはいかない、そんなことをすればお上の権威がより一層深刻に傷つく・・・そう考えたように思われてならないのだ。
 検察官(検事)も人間である。間違いは必ず起こす。加えて、自分自身を有利な立場に置きたい、偉くなりたいという欲がある人もそれなりにいるはずである。元々がエリートだから、なおさらそのような出世欲は強いかも知れない。
 私ごときが思い出してみても、検察によるねつ造、でっち上げの類は村木厚子さんの事件、PC遠隔操作脅迫事件、志布志事件・・・といくつかある(→こちらの記事参照)。公権力は、マスコミの力を借りつつ主権者がしっかりと監視してこそ、かろうじて正常に機能するのであって、脳天気に信頼してしまうことは非常に危険だ。
 ところが、日本人は「お上」にとても弱い。検察が「黒だ」と言い出したことは、そのまま信用し、裁判など始まる前から有罪扱いである。私などは、いつ何時、無実の罪をかぶせられるかも知れないと不安なのだが、世の中の人には、そんな心配は全然していないようだ。ある意味で羨ましい。
 いったい何回、同様の事件が繰り返されれば、人は目が覚めるのだろうか?そもそも、こんな情報なんて面白くもなんともないから関心がない、ということで、何回同様の事件が起こっても、決して目覚めることはないのかも知れない。
 袴田巌さんは87歳。審理が長引けば、判決まで生きていることは難しいだろう。袴田さんの面倒を見ている信じられないほど元気なお姉さんだって、90歳だ。あるいは検察は、袴田さんが亡くなって、この裁判がうやむやになってしまうことを目論んで、極めて困難な有罪立証という選択をしたのではないか?私はあらゆる権力を信じない。