首長のワクチン接種

 宮城県知事が、ワクチンの接種について自分を特別扱いせず、他の60歳の人と一緒に受けると語ったことがニュースになっていた。最近、あちらこちらの自治体で、首長等がいち早く接種を受けたことが批判を受けているため、あえてそのような宣言をしたものと見える。
 だが、私は、首長が優先的に接種を受けることは悪いことではないと思っている。どこかの町の町長は、集団接種を陣頭指揮する立場にあるので、自分も医療関係者であり、だから優先接種の対象になるのだ、というようなことを語り、またどこかの町長は、会場に来なかった人がいて余ったワクチンがもったいないから使用したかと言っていたが、何もそんな苦しい、こじつけめいた言い訳をしなくても、堂々と受ければいいのである。
 なぜなら、首長の健康はその自治体にとって最大の危機管理だからである。詳細は憶えていないが、以前、アメリカという国が大統領の健康をどのように管理し、守っているかというレポートを読んだことがある。それはそれは物々しい。だが、大統領の生死が国家の安定と安全とに直結しているとなれば、大統領の体を守ることは国を守ることに他ならない。大きなエネルギーが費やされるのは当然である。
 民主主義国家において「平等」は大切な価値だ。だが、何でもかんでも同じであることがいいとは限らない。体の不自由な人には席を譲る(優先席を設ける)、病気の人にはその病気の性質によって食事の内容を変える・・・これらの配慮を「不公平だ」と批判する人はいないだろう。世の中には様々な事情というものがあって、あまり平等を杓子定規に考えて運用すると、かえって世の中全体に不利益をもたらすのである。
 首長が感染して隔離されてしまえば、重症化すれば、死んでしまえば、その自治体の運営に大きな支障が出る。だから首長の健康を大切にする。そのことに何の問題もない。首長個人が健康で楽しい生活ができるように、ワクチンを優先的に接種しろといっているのではないのである。
 批判する方もする方だが、このようなことをきちんと説明できない首長(政治家)も不甲斐ない。もしかすると、彼らの頭の中には危機管理などというものは一切なく、自分が感染を免れたいだけなのだろうか?それだと、後ろめたい気持ちもあるだろうし、はっきりとした説明をしないのも理解できるのだけれど・・・。